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アングル:ドイツ国債急落から1年、市場の警戒が再燃

2016年04月28日(木)16時29分

 4月27日、ドイツの国債価格が急落して丸1年、市場の環境は当時によく似ており、29日のユーロ圏消費者物価指数(CPI)の発表を機に再び混乱に見舞われるのではないかとの警戒感も生じている。写真はフランクフルト証券取引所。2015年1月撮影(2016年 ロイター/Pawel Kopczynski)

[ロンドン 27日 ロイター] - ドイツの国債価格が急落して丸1年、市場の環境は当時によく似ており、29日のユーロ圏消費者物価指数(CPI)の発表を機に再び混乱に見舞われるのではないかとの警戒感も生じている。

しかし市場参加者は1年前の教訓に学んでおり、今回は損失を免れるかもしれない。

昨年は4月30日に発表されたCPIが前年比で小幅なプラスに転じたのをきっかけに、ドイツ国債価格が10%超も下落した。

現在、ドイツ10年物国債利回りはゼロに近付きながらもマイナス圏には入らず、エコノミストは足元のCPIを前年比マイナスと予想しており、状況は1年前にそっくりだ。

ジャナス・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ライアン・マイヤーバーグ氏は「昨年の相場反転が非常に痛かっただけに、人々は今回、ずっと慎重に取引に臨んでいると思う」と話す。

ドイツ10年物国債利回りは今月0.075%まで下がった後、現在は0.30%前後まで上昇している。

1年前の相場急落時には、利回りが過去最低の0.05%から数週間で1%強まで跳ね上がった。

29日発表のユーロ圏CPIは、前年同月比0.1%低下すると予想されている。

ただ今回は、1年前に比べて重要な相違点がある。

昨年は欧州中央銀行(ECB)の量的緩和により利回りがゼロに接近し、マイナス圏に突入する可能性さえあるとの見方でほぼ全員が一致。取引が一方向に偏っていた。

現在は少なくとも見方が分かれている。キャンター・フィッツジェラルドのシニアアナリスト、オーエン・キャラン氏は「利回りが底無しに下がり続けるとの見方は当時ほど強くない」と言う。

実際、ECBのデータによると、外国人投資家は2月にユーロ圏の長期債を420億ユーロ売り越している。これは4カ月連続の売り越しで、売り越し幅は昨年7月以来で最大だ。

<割高感が薄れる>

今回は違うとされるもう1つの理由は、ドイツ国債に1年前ほどの相対的な割高感が無いことだ。

ECBが中銀預金金利をマイナス0.4%まで引き下げたため、利回り水準が1年前と同じでも、投資家にとっての妙味は増している。

また、日本国債など世界の主要国債に比べても、ドイツ国債利回りの魅力は高まっている。

BNPパリバの欧州金利ストラテジスト、パトリック・ジャック氏は「現在の状況は2015年4月とは相当違う。当時、ドイツ国債のバリュエーションは極端に高かった」と述べた。

また、目先のインフレ率が上振れて利回りが上がったとしても、長期的には日本のような低インフレ、低利回り環境が続きそうだとの指摘もある。

(John Geddie記者)

ロイター
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