ニュース速報

ビジネス

焦点:ダボス会議で世界市場の急落議論、危機再来は予想せず

2016年01月21日(木)16時01分

 1月20日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開幕。出席者の間では、世界的な市場急落が議論の中心となっている。ただ、これまでのところ金融危機の前兆ではないとの見方が多い。写真は会議に向かう出席者たち(2016年 ロイター/Ruben Sprich)

[ダボス(スイス) 20日 ロイター] - 20日に開幕した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の出席者の間では、世界的な市場の急落が議論の中心となっている。ただ、これまでのところ金融危機の前兆ではないとの見方が多い。

今年のダボス会議は、ロボットの台頭による雇用への影響やジェンダー格差、富の不平等といった多岐にわたる問題を議論するが、こうした中、MSCI世界株指数<.MIWD00000PUS>は2013年7月以来の低水準に落ち込んでいる。

今月、同指数は9.9%下落。この状態が続いた場合、世界的な金融危機終盤の09年以降で最大の月間下落率となる。

会計事務所KPMGのジョン・ビーマイヤー会長は20日、ロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで「これが2008年の(危機の)再来とは思わない」とした上で、「とはいえ、特に中国の景気減速など市場に影響を及ぼしている重大なリスクの存在を否定しているわけではない」と語った。

中国の急速な景気減速に加え、原油価格が大幅に下落し、世界の市場に動揺が広がっているが、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)も、再び世界的な金融危機の状態に逆戻りすることはないとの見解を示した。

ロイター・テレビジョンのインタビューで「金融危機が再発するとは思わない。ただ対応が必要なマイナス面もある」と指摘。「懸案事項はあり、中でも中国が困難で不透明感の強い移行期にあることは考慮しなければならない」と述べた。

<問題の兆し>

一方、波乱のスタートを切った2016年の見通しにそれほど確信を持っていない向きもある。

ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏は、ロイターに対し「市場の混乱は何かが間違っていることを示唆している可能性がある。たとえ不合理だとしても実際に影響が及ぶ可能性がある。今起きていることは、過剰な楽観主義は間違っているというメッセージだ」と指摘。

「米連邦準備理事会(FRB)は分かっていない。世界の状況が良くない中、FRBは利上げし、ブラジルも利上げした。中銀は市場よりも現実とずれていることがよくある」と語った。

また、英防衛大手BAEシステムズのロジャー・カー会長は「昨年のダボス会議のころはまだ状況は良かった。議題は貧富の問題で、誰もが富を失っていくのかという問題ではなかった」と述べ、「今は非常に悲観的なムードが広がっている」と話した。

<健全な調整>

しかし、中国の景気減速については、バークレイズのボブ・ダイヤモンド元最高経営責任者(CEO)らバンカーが「健全な調整」だとし、深刻であるものの、必要なプロセスとの見方を示す。

ダイヤモンド氏は記者団に対し、今の状況は米経済が回復しつつあり、西欧の状況も良く、08年第4・四半期や09年第1・四半期の「これまでで最も深刻な経済調整」とは比べものにならないと述べた。

上海にある中欧国際工商学院の丁遠教授も、人民元や中国の主要株価指数の下落を中国経済の健全性を示す指標だと受け止めるのは間違いだと指摘。

「これらは短期的なボラティリティーだ。市場は短期間に注目し過ぎ。今後2カ月といった短期ではなく、今後5年といった期間を見通すべきだ」と語った。

(Kirsten Donovan記者、Elizabeth Piper記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:加藤京子)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措

ビジネス

FRB金利据え置き継続の公算、PCEが消費の慎重姿

ワールド

米、対ロ制裁法案審議へ ロシアの和平交渉遅延を非難

ワールド

トランプ氏「ガザ停戦合意に近づいている」、イラン核
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中