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インタビュー:多少の円安、まだ経済全体にはプラス=自民・山本氏

2015年09月11日(金)21時03分

 9月11日、自民党の山本幸三衆議院議員(写真)はロイターのインタビューに応じ、現在のドル/円はリーマンショック前の124─125円の水準を下回ると述べ、多少の円安進行は日本経済全体にとってはまだプラスとの認識を示した。1月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 11日 ロイター] - 自民党の山本幸三衆議院議員は11日、ロイターのインタビューに応じ、現在のドル/円はリーマンショック前の124─125円の水準を下回ると述べ、多少の円安進行は日本経済全体にとってはまだプラスとの認識を示した。

追加緩和によって円安が加速するかどうかはわからないが、マイナス面には財政的な工夫が必要になると語った。

<経済は「足踏み」、金融・財政両面の対応必要>

日本経済の現状については「足踏み状況。いまひとつ力不足だ」と述べ、金融・財政政策両面から対応が必要とした。

中国経済の減速を背景に金融市場が不安定化している状況が実体経済に与える影響について山本氏は「直接的に日本に大きな影響はない」としながらも、新興国経済への打撃などを通じ「世界経済全体が減速する間接的影響がある」と警告。「日本経済が落ち込みすぎないよう、政策対応を考えなければならない」と語った。

<追加緩和時期、来週の日銀決定会合では材料不足>

山本氏は、追加緩和の判断には「中国経済がどの程度深刻なのか、十分見極める必要がある」とし、来週14─15日の日銀金融政策決定会合で踏み切るには「材料が不足している」との見方を示した。

そのうえで、追加緩和の時期について、日銀が経済・物価情勢の見通し(展望リポート)を策定する10月30日の金融政策決定会合が「いいタイミング」と見通した。

<円安の副作用には財政措置で対応>

追加緩和によって円安が加速する懸念に関しては「若干はある。経済全体ではまだプラスだが、中小企業や低所得者、中小企業の多い地方経済などへの影響は配慮しなければならない」と述べ、「それを手当てする、財政的な工夫が必要」と補正予算の必要性に言及。

規模は「3.5兆円から5兆円程度考えないといけない」とする一方、補正予算編成は7─9月期の経済指標をみて、来年の通常国会への法案提出になるとの見通しを示した。

一方、円安が経済全体に与える影響に関して山本氏は「リーマンショック前の水準、(1ドル)124円─125円は、ひとつの目安になる」と指摘。

ドルは現在120円台で推移しているが、追加緩和による円安進行が小幅であれば緩和の障害にはならないものの、円安のマイナスの影響を受ける低所得者や中小企業向けを中心に財政面で対応する必要があるとの認識を示したとみられる。

<米利上げはそう簡単にはやらないとの印象、来週は「ない」>

世界の金融市場が最も注目する米国の利上げ時期については、慎重な判断になると指摘した。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が重視する労働市場では、「失業率はよくなっているが、賃金はまだ十分に上がっていない」と指摘。「(利上げが)国際経済に与える影響も当然考えなければならない」とし、「そう簡単にはやらないとの印象だ」と語った。

中国経済の落ち込みが深刻であれば、利上げは来年になる可能性も「排除できない」とも語り、来週16─17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策変更は「ない」と見通した。

<「アベノミクスを成功させる会」を再開、必要な政策対応検討へ>

山本氏は党内きってのリフレ派で、安倍政権の経済政策(アベノミクス)を推進してきたひとり。安全保障関連法案が今国会で成立した後、政府・与党は「アベノミクス第2ステージ」に向け、再び経済に軸足を戻す構えを明確にしている。

山本氏が会長を務める「アベノミクスを成功させる会」も来週15日に再開し、アベノミクス第2ステージを成功させるために何が必要か検討を進める。

週1回のペースで3回程度会合を開く予定。中国と日本の経済の現状分析を行った後、必要な政策について検討し「勉強の成果を、安倍首相に何らかの形で伝えたい」としている。

*内容を追加します。

(吉川裕子 木原麗花 編集:田中志保)

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