ニュース速報

ビジネス

AIIB設立要綱、理事会設置で実質合意=国際金融筋

2015年04月12日(日)20時09分

 4月12日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、理事会を設置することが参加表明国間の交渉で実質合意に至ったことが明らかになった。写真は2014年10月、北京で開かれたAIIB設立セレモニーで代表撮影(2015年 ロイター/Takaki Yajima)

[東京 12日 ロイター] - 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、理事会を設置することが参加表明国間の交渉で実質合意に至ったことが明らかになった。国際金融筋が明らかにした。

出資比率は中国の主張を取り入れ、アジア域内諸国が75%、域外諸国が25%との案が有力となっている。開発金融の専門性確保のため、すでに米国や英国から著名な専門家を採用した。

国際金融筋によると、AIIBの資本金は最終的に1000億ドル程度となる予定。当初は500億ドル程度とし、徐々に増資していく見通しだ。発足時に各国から払い込まれる額は、20%程度の100億ドルになるとみられている。

アジア開発銀行(ADB)の資本金は1650億ドルだが、将来的にはこれを上回る規模に増資することも可能との見方も出ているという。

各国の出資比率は、国内総生産(GDP)に応じた規模となる。アジア域内諸国は75%、それ以外の地域は25%となる方向だ。日本の出資比率は10─15%程度となる。

ただ、名目GDPを基準にするか、購買力平価(PPP)によるGDPを採用するのか、参加国間で交渉が続いている。

物価水準が国際的にみて低い新興国にとっては、購買力平価を使ったGDP算出の方が、名目GDPよりも自国のGDP規模が相対的に大きくなる。

いずれの基準によっても、中国は参加を表明している国々の中で、最大の出資比率を確保することになる。

国際通貨基金(IMF)統計によると、2014年の中国の名目GDPは10兆ドル、日本は4.8兆ドルで中国が2倍以上の規模となっている。PPPベースでは中国が18兆ドルと日本の4.9兆ドルの3倍超となる。

日本政府関係者によると、出資した場合の試算を3月末までに官邸に提示した。それによると、資本金が500億ドル、払込額が100億ドルの時点では15億ドル(1800億円)、資本金が1000億ドル、払込額が200億ドルの場合は30億ドル(3600億円)としている。

これ以外にも、複数の試算を安倍首相に提示したという。現時点で、出資国の枠組みや何を基準にするかの合意がないため、最終的に、金額は大きく振れる可能性が高いという。

国際金融筋によると、組織の透明性や公開性について、交渉国間では理事会を設置することを設立要綱に盛り込むことで合意したという。

ただ、常設の組織ではなく、案件ごとに出身国にいる各理事にメールなどで承認を求めるような「非常駐理事会」とする案を中国が主張している。

開発金融の専門性の確保では、すでに世界銀行からインフラ投資などの専門家を採用。米国からは法律専門家、英国からは環境基準の専門家など、世界的に著名な人材を招へい。AIIB自身が各国に高い専門性を有していることをアピールしている。

設立要綱に関する交渉は、すでに3回程度開催された。今後、最終的な詰めの交渉が行われる見通しだ。

(中川泉 梅川崇 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米で拘束の労働者が出国へ、現代自工場の不法就労 日

ワールド

チュニジア沖でガザ支援船にドローン攻撃、2日で2度

ワールド

インド、ミャンマー反政府勢力とのレアアース取引を模

ワールド

米環境保護局、AI向けインフラの建設加速へ対策提案
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題」』に書かれている実態
  • 3
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 4
    富裕層のトランプ離れが加速──関税政策で支持率が最…
  • 5
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 6
    カップルに背後から突進...巨大動物「まさかの不意打…
  • 7
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 8
    もはやアメリカは「内戦」状態...トランプ政権とデモ…
  • 9
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中