コラム

性犯罪や浮気の証拠に? セックスを通じて、お互いが持つ「独自の微生物」が交換されていることが判明

2025年02月21日(金)20時20分
性行為

(写真はイメージです) Ground Picture-Shutterstock

<豪マードック大、西オーストラリア大などに所属する研究者たちの実験に、異性愛カップル12組が参加。「微生物捜査」が犯罪捜査や離婚訴訟に使われる日が来る?>

近年、人の体内にいる微生物に大きな注目が集まっています。

たとえば我々の持つ腸内細菌は約1000種、100兆個に及び、個人ごとに異なる微生物叢(主に細菌類から成る微生物の集合体)を形成しています。これらは腸の健康だけでなく、うつや認知症などにも関係しているとされ、「腸内細菌はもう一つの臓器」として取り扱う研究者も増えています。

一方、個人ごとに異なる微生物叢は、腸内だけでなく皮膚や口腔内、性器などにも形成されています。この微生物叢を犯罪捜査に使えないかと考えるグループもいます。

マードック大学、西オーストラリア大学などに所属するオーストラリアの研究者らは、性行為によって、男女カップルの互いの性器官微生物(sexome:セクソム)が交換されることを示しました。性犯罪の証拠として、DNA検査が使えない場合に微生物が代わりの証拠になる可能性があるとも述べています。研究の詳細は、世界最高峰の学術誌「Cell」の姉妹誌「iScience」に12日付で掲載されました。

研究者たちは、なぜ「微生物捜査」の可能性を研究したのでしょうか。提唱された分析法は、どの程度応用が効くものなのでしょうか。概観してみましょう。

女性の約3人に1人が性的暴行を受けている

日本では最近、芸能界やマスコミにおいて行われた「社会的に強い立場にある者が弱者に意に沿わぬ性行為を強要したケース」が明るみに出ることが増えています。

また、一般社会でも女性や子供といった弱者が性犯罪のターゲットとなることも依然として多く、最近では小学生女児10人に性的暴行を加えた28歳男に対する判決公判が大阪地裁で18日に開かれ、求刑通り無期懲役が言い渡されました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

SBI新生銀のIPO、農林中金が一部引き受け 時価

ワールド

米下院がつなぎ予算案可決、過去最長43日目の政府閉

ワールド

台湾経済、今年6%近く成長する可能性=統計当局トッ

ビジネス

在欧中国企業、事業環境が6年連続悪化 コスト上昇と
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story