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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアの人手不足問題

画像: hapabapa-iStock

街中を歩いていたり、ニュースを見ているとオーストラリアは一見コロナ前の日常を取り戻したかのように見えます。週末のカフェやレストランは人で賑わっています。しかしよく見てみるとコロナ前の日常には至っていません。

オーストラリアの失業率は現在3.4%で、過去50年近くで最も低くなっています。失業率が低いことは良いようにも思えますが、良いことばかりではありません。オーストラリアはOECDの国の中でカナダに次ぎ2番目に深刻な労働者不足に陥っているからです。

これにはいろいろな理由がありますが、やはりコロナのためほとんどのワーキングホリデー制度を使って働いていた外国人ワーホリや留学生に帰国を促したが大きいようです。オーストラリアはコロナ前から留学生やワーホリの労働力に依存しているところがありました。バックパッカーなどが労働力の多くを占める野菜やフルーツのピッキング、ホテルやレストランなどでは労働力のの多くをバックパッカーとも呼ばれるワーホリの人々に頼っていました。今かなりの人手不足のようです。2020年の3月に比べると今年5月の時点で15歳から34歳の人の人数は約20万以上少ないようです。労働者不足は農業、交通、物流、小売りにかなりの影響を与えているようです。オーストラリアのビッグ4と呼ばれる大手の銀行も現地のスタッフが確保できないため、多くの事業を海外に委託しています。労働者不足のため地方のホテルなどもサービスの質の低下を余儀なくされ、農家も通常よりも少ない生産量を余儀なくされています。

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画像:Surapong Tanachotrungruang-iStock

オーストラリアの国境が開いてからもビザの申請の複雑さや高い税金のため移民やワーホリの数が増えるのにはまだ時間がかかりそうです。オーストラリア政府は労働者不足を補うために永住者の受け入れの数を大幅に増やしました。政府は先日のジョブサミットでビザの処理を早めるのと職業訓練に予算を大幅に増やすと発表しました。また保育園や幼稚園の援助を増やしたり、年金を受け取りながら仕事を続けられる制度を模索しているようです。

オーストラリアは日本との時差がほとんどないことや治安の良さもあり、コロナ前は留学生やワーホリの方にも人気がありました。しかしコロナが悪化し始めた2020にワーホリや一時滞ビザの人たちに帰国を促したのはかなりの反感を買いました。コロナとは関係ありませんが、以前は多くの中国からの留学生がいましたが、オーストラリアと中国の関係もここ数年あまり良いものではありません。

オーストラリアが人手不足を解決していくのにはまだ時間がかかりそうです。




参考
https://www.ft.com/content/a39bea1f-ed87-45c4-a762-b59121115e9f
https://www.ft.com/content/4f6196d1-5dac-498f-b18b-840c2258da18
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-09-01/australia-boosts-migration-to-195-000-to-ease-skills-crisis

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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