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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

パリの新しい観光手段トゥクトゥクの危険な罠

一見、とても可愛くて魅力的なパリのトゥクトゥク      筆者撮影

約2年間、パンデミックのために、パリの街はパッタリと観光客の足も途絶えていましたが、今年の夏のバカンスシーズンには、コロナウィルス感染者数が減少傾向にあることもあり、また、ほぼ、全ての感染対策規制も撤廃されたために、パリにはすっかり観光客が戻ってきました。戻らないのは中国人や日本人だけで、実質、観光客数は、パンデミック前の2019年を上回ったとも言われています。

この2年間の間にパリは大きく変わり、パンデミックの被害で閉店した店舗の代わりに新しい店舗が登場したりと、しばらくぶりに歩いていると、「えっ??こんなお店あったっけ??」などと驚かせられることもしばしばです。

パリの街に急激に増加したトゥクトゥク

観光客が増えたとはいっても、以前ほど、観光バスは走っていない気もする昨今、観光客は多くても、パリジャン・パリジェンヌたちの多くはバカンスに出かけて空いているパリです。今なら、メトロやバスも空いているのでパリを満喫するなら今!とパリの街を歩いて、お目当てのお店にでかけてみたりしても、夏のバカンス中は休業しているお店も多くて、たまたま近くまで行ったので、何十年ぶり?かでエッフェル塔のあたりを散歩することに・・。

いわゆる観光地といわれるところは、誰かがパリに来てくれた時くらいしか行かず、今どき、日本から友人が来てくれたりしても、エッフェル塔に行きたいという人もいなくて、我が家の窓から遥か彼方に遠くにちっちゃく見えるエッフェル塔を指して「ほらほら、あそこにエッフェル塔!夜になって暗くなると1時間おきにキラキラ光るよ!」などと言ってごまかしていたので、パリに住みながら、エッフェル塔に行くことなどほとんどなく、「東京に住んでいても別に東京タワー行かないじゃん!」などと思っていました。

しかし、わざわざ出かけたわけではなくとも、たまたま近くに来たのであれば、すぐそこにエッフェル塔が見えるところまで行ったら、滅多に行く機会はないんだから、散歩がてらに行ってみるのもいいか・・と思って歩いて行くと、以前(といっても、もういつだったか覚えてもいないくらい昔ですが・・)行った時よりも、数段、整備されていて、やっぱり間近で見るエッフェル塔は迫力があって、今さらのように、ちょっとワクワクした気持ちにもなりました。

周辺は、ゆったりとした道に美しい旧建築が立ち並ぶ緑の濃い街並みで、歩いているだけでも、パリの美しさを味わえる場所でもあります。そんな街並みの中にちらほらとゆったりと走っている可愛い赤いトゥクトゥクは、以前には見かけなかったものでした。環境問題にとても厳しくなっているパリでは、自動車の交通規制もうるさくなり、近い将来、パリの中心部からは、住民やタクシーなどを除いて車が通れなくなる方向に転換しつつあるので、このトゥクトゥクなどは、環境にも優しく、観光客にとっては、なかなか良い観光手段ではないか?とも思ったりしました。

最初は、「うわっ!可愛いじゃない!」と思って、信号待ちしていたトゥクトゥクを覗き込んでみたら、まず、フェラーリのマークがついていて、「フェラーリね・・」と苦笑い・・。そして、そのフェラーリに貼ってある値段表を見てびっくり! 

価格は行き先によって20ユーロから35ユーロ(約2,800円〜4900円)になっていて、しかも、「一人当たり」と書いてあります。行き先もシャンゼリゼ、凱旋門、エッフェル塔、ギャラリーラファイエット、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オペラ座、バトームーシュ、オルセー美術館、コンコルド広場などが書いてあって、それぞれに価格設定がされています。一人あたりの値段としたら、これは、なかなか高額です。しかも、表示は行き先のみで、どこからどこまでという設定でもありません。言葉もままならず、通貨の感覚も薄く、土地勘もない観光客にとって、これは危険なのではないか?怪しいな・・とすぐに思いました。

運転手さんとの距離も近く、身体で風を感じながら観光できるこの交通手段は一見、心地よい感じでもありますが、実のところ、ここ2年でパリにあっという間に増殖したトゥクトゥクは、現在400台近くあると言われており、中には正規に運行しているものもあるものの、90%は違法営業だそうで、詐欺まがいの値段設定で、観光客が法外な料金を請求されるというトラブルが後を絶たないのだそうです。

私が見かけたトゥクトゥクには一応、価格表がついてはいましたが、これも、こことここを通ったから・・などと、次々と値段を上乗せされる可能性もないとは言えず、場所によっては、歩けない距離でもありません。トゥクトゥクによっては、値段はその場の交渉でというような怪しいものもあり、運転手さんが、30分のツアーを提案してくれて、料金は50ユーロ。少々高いけど(少々どころではない)、ナポレオン博物館(アンヴァリッド)をはじめ、5、6個のモニュメントも通るから、などと吹っかけてくる場合もあります。しかし、何の解説もあるわけでもなく、ただ、走るだけ。中には英語どころか、フランス語もたどたどしいのに、「自分はフランス人だ!」と言い張る運転手さんまでいるのです。そんな、不確実な価格設定で1時間、2人で160ユーロ(約2万2千円)払わされたなどという被害も報告されています。しかも、ほとんどが現金払い、しかも支払いの段になってお釣りがないなどと言い出すケースまで・・、領収書は出さないと言い張ります。

パリ警視庁は、この違法トゥクトゥクは著しいパリのイメージダウンに繋がると、私服警官を動員して、検挙を始めていますが、この新しい交通手段に関して、正確に規制する法律がないそうで、現在のところは、バイクタクシーに関する規制に基づいて規制を進めているようですが、詐欺まがいの法外な価格の請求はやはり違法です。このような被害に遭わないためにも、パリでトゥクトゥクに乗る前には、前もって、きちんと価格の交渉をすることが不可欠です。

本来ならば、環境にもやさしい、絶好の移動手段になり得ると思うのですが、あっという間に90%が違法営業に埋め尽くされるという残念な結果がパリの現実です。

パリの観光客狙いには、出稼ぎも少なくない

あらためて歩いてみると、パリは本当に美しい街(美しいところばかりでもないけど・・)で、ヨーロッパの中では、やはり格段に観光客が集まるところでもあります。しかし、観光客の集まるところには、残念ながら、周辺のヨーロッパ諸国から観光客狙いの犯罪者も同時に集まって来ているのが現実でもあります。スリやひったくりはもちろんのこと、怪しいものを法外な値段で売ったり、観光客とみれば、値段をふっかけたり、路上で賭博まがいのことをしたりと、パリの観光地には、見るからに怪しい人がウヨウヨしています。今年のトレンドは、「観光客なりすましスリ・ひったくり」などとも言われていましたが、いやいや、古典的な怪しい物売りもたくさんいます。普段、ケチケチな生活をしている私には、「こんなもの、こんな値段で買うか??」というものまで、観光地では飛ぶように売れているので、これは無くならないだろうな・・と残念な気持ちで遠巻きに眺めて通り過ぎます。

普段、私が出かけるようなところでは、決して見かけないし、そんなものは決して売れないので、観光客狙いであることは明白なのですが、旅行に来て、ついつい気も緩んで、お財布の紐も緩む観光客相手の商売は、その手の人々にとっては絶好のカモになってしまうのです。

フランス政府は、2024年のパリオリンピックに向けて、観光客を呼び込むための「安全な街 パリ」のイメージアップを計ろうとしていますが、このような場面を見る限り、オリンピックの際の警戒は、非常に大変なものになる気がしています。美しいパリの街とはうらはらに、パリの観光地には、思わぬ罠が潜んでいます。パリに来られる際には、嫌な思いをしないようにくれぐれもお気をつけください。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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