World Voice

パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

ロストバゲージ回収まで数ヶ月 トラブル続きの夏のバカンス

航空運賃大幅値上げ、突然のキャンセル、戦争のための迂回ルートの長距離フライトに加えて、ロストバゲージ    Pixabay画像

フランス人にとって、夏のバカンスは最も重要なもので、彼らはバカンスのために生きているといっても決して過言ではない、一年を通しての最も重要なイベントでもあります。フランス人が最もお金を使うのはこの夏のバカンスで、そのために日頃はなかなか慎ましい(ケチともいう)生活を送っている人も少なくありません。本格的な夏のバカンスシーズンは7月に学校がお休みになった時期から始まりますが、今年のバカンスは、立て続けにトラブルに見舞われています。

空港のストライキが生んだ悲劇 ロストバゲージ2万個が空港に放置状態

7月のバカンスシーズン突入とともに、SNCF(フランス国鉄)を皮切りに、公共交通機関でのストライキが相次いでおこっています。もともと、ストライキ大国とも呼ばれるフランスでのストライキは珍しいものではないのですが、今回のストライキは、パンデミックの影響で一旦、経営を縮小し、人員削減を行った空港や航空会社で、今年の夏は、フランスではコロナウィルス第7波を迎えているというのに、もうすっかり日常生活に戻った状況で、今まで自粛(といってもフランス人なりの自粛ではある)して、旅行なども国内旅行にとどめていた人々もすっかりもと通りのバカンスを過ごすために、予約が殺到したのですから、残された職員はもうそれは大変なわけです。

加えて、世界中を襲っているインフレの波、物価の上昇はフランスもまた例外ではなく、減らされた給料や休暇、人員が減った分だけ負担がかかる労働内容、労働時間の増加とで、通常は「一体、何の文句があってストライキなんかやってるの?」というストライキも少なくはないのですが、今年はそれなりの理由が積み重なっているもので、なかなか強力なストライキなのです。

中でもバカンス突入時に照準を合わせて行われた空港でのストライキは、なかなか激しいもので、一番多くの人がバカンスに出発するという週末に空港公団職員、また、空港の消防隊員のストライキのために予定便の20%、つまり5便に1便がキャンセルという、なかなかの確率での欠航。空港職員に加えて空港の消防隊員のストライキのために飛行機の離発着に安全性が確保できないという理由もあってのキャンセル・欠航でした。当日は、その振り替え便の手配や手続きなどで、空港には人が溢れかえり、大変な混乱となりました。

また、それに加えて、さらに大きなダメージは、空港職員のストライキに加えて、荷物積載システムがダウンというアクシデントも重なって、到着便の荷物を回収するまで5時間もかかったという人まで出て、次から次へと到着する便の荷物をピックアップするための人がどんどん空港に溜まっていくわけですから、それは大変なことになりました。しかし、5時間かかったとて、その日のうちに荷物をピックアップできた人はまだマシでした。到着便の荷物が運び出されるのに時間がかかっただけで、荷物は自分のいるその場所と同じ場所にあるのですから・・。

それよりも、ずっと悲惨だったのは、その日の出発便のうち約半数の乗客は荷物を積まれないまま飛行機が出発してしまったという信じられない状況でした。すったもんだの挙句にようやく飛行機に乗ったと思ったら、自分がチェックインしたはずの荷物が積まれていなかったなど、ちょっと考えられないことです。それも荷物の積み残しとか、そんな程度の規模ではなく、その日の出発便の約半数が荷物を積まずに出発してしまったというのですから、ちょっと理解に苦しみます。こんな場合、飛行機が遅延しても荷物を積んでもらう方がいいのか?それともとりあえず、荷物なしでも出発してくれる方がよいのかは意見も色々とあるところだと思いますが、とにかく航空会社(特にエールフランス)は、荷物を載せないまま出発する道を選択したのです。

例えば、私の場合などは、すぐに日本行きの自分のスーツケースについて考えてしまいますが、日本に持っていくものは、航空便の利点を活かして、なまものなど日持ちしない食糧が多く、出かける直前まで冷蔵庫に保管しておいたものを保冷剤とともにスーツケースに入れて、飛行機が離陸するまでなんとか保冷できてさえいれば、飛行機の荷物を積載する場所ではほぼ保冷状態に置かれているわけで、そんなことを考えて荷物を用意します。それが空港に放置されれば、荷物はほぼお陀仏状態。しかも、荷物の郵送料金もここのところ、大変な値上げと税金も余計にかかるようになってしまったため、航空便で20キロ以上の荷物を送るとなったら、大変な負担になるため、ここぞとばかりに荷物を持っていくのです。しかし、これが、もしも空港に放置されたら?・・など、考えただけでも恐ろしいことです。

この日に置き去りにされた荷物の処理について、荷物を積まない状態で出航を決定した時点で残された荷物をどのように処理するかは考えられてはおらず、2週間以上経過した後も空港には2万個以上のスーツケースが保管されたままだと言います。空港側は保管していると発表していますが、これはもう保管というより放置状態。ストライキが終わったとはいえ、このバカンスシーズンに毎日毎日、分刻みで離発着する飛行機がある以上、一度、放置された荷物の処理にまで手が廻るとは考えづらく、不満を抱えた空港職員が残業してまでこれらの荷物を処理するはずもありません。

当初、空港サイドは、「1週間以内には荷物は必ずお届けします」と言っていたものの、未だに空港に置き去りにされた2万個のスーツケースは、保管というよりも放置状態。2週間も経ってしまったら、もう持ち主はバカンスを終えて、届け先も変わってしまいます。この事態を受けて、エールフランスは、一刻も早くスーツケースを持ち主に返すために増援を動員したことを発表していますが、スーツケースが何の保護もされずに倉庫の外、コンテナでむき出しになっているものもあることがわかっています。このロストバゲージの量を考えると、パリ空港組合は、この荷物の山が処理されるには、数ヶ月間かかるはずだと断言しています。つまり、空港職員はすぐにこの荷物を処理するつもりはないと宣言しているのと同じことです。

燃料費の高騰により大幅に値上がりしている航空運賃に加えて、突然のキャンセル、また場所によっては迂回ルートのための長距離フライトに加えて、数ヶ月も受け取り不可能なロストバゲージでは、もう当分、シャルル・ド・ゴール空港からの飛行機はゴメンだと思わずにはいられません。

公共交通機関の次はパリ市内の市営プールのストライキと相次ぐ森林火災

フランスは、6月の半ばすぎに40℃に迫る勢いの猛暑というより酷暑を迎え、これで終わるはずはないとは思いつつも、その嫌な予感は的中し、今週末から来週にかけて、再び40℃近い酷暑が訪れるという予報が出ています。そんなこの夏の暑さの中、パリ市の市営プールは、7月1日から8月31日までのストライキを呼びかけており、パリ市のホームページによると、パリ市内の42ヶ所のプールのうち、すでに12ヶ所のプールが閉鎖しているそうです。私が子供の頃(日本で)は、夏休みの間も小学校のプールに通ったりもしていましたが、フランスでは学校にプールがあるということなどなく、お手軽に行けるプールといえば、市営プールしかないのです。この市営プールの酷暑の中のストライキは、小さな子供を持つ親にとっては大変な痛手となります。

猛暑といえば、猛暑のうえに、さらに熱いのは、7月に入ってからフランス各地で続発している森林火災も大変なことになっています。特に主には西部と南部にかけて起こっており、日本の安倍元総理が銃撃されたニュースがフランスでも大騒ぎになっていた日、アヴィニョン近郊で大規模な森林火災が起こっています。また先日もジロンド県(フランス南西部に位置するフランス最大の県(コート・ダルジャン、ボルドーなどのある地域)で、大規模な森林火災が発生し、7,850ヘクタール焼失とともに、住宅・家屋にまで被害が及び、森林火災に対する緊急非常事態が発令され、11,500人以上が避難、5ヶ所の緊急宿泊センターが開設され1,400人が収容されています。11,500人以上が避難して、収容されているのは1,400人ということは、未だ避難所なしに生活している人が1万人近くいるということで、これはもうバカンスどころの話ではありません。この緊急事態の避難もフランス人となると、また大パニックで、ニュース番組などでは、「日本の災害時における避難はなぜ、パニックをおこさずに皆が避難できるのか?フランスでそれができないのはなぜなのか? フランスの緊急時の避難は何が問題なのか?」などと日本を引き合いに出して語っています。それは、災害への準備や心構え、また国民性の違いの問題が大きいと私は思っていますが・・・。

ここ数日、一体、どこの森林なのか?いちいち書き留めていませんが、テレビをつければ、戦争の話題以上に、どこかの森が燃えている映像で、今年のフランスのバカンスは全く踏んだり蹴ったりだな・・と感じています。そのうえ、コロナウィルスの第7波は依然として上昇し続け、このままでは、トラブル続きの夏のバカンスの後は、一体どうなることやらと心配の種は尽きることがありません。

 

Profile

著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ