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スタートアップ超大国 インド~ベンガルールからの現地ブログ~

永田賢|インド

最新版インドのスタートアップ・エコシステム概観・前編(2023年12月)

pixabay

前回の寄稿より少し日が空いてしまいましたが、インドの状況としては、G20といったビックイベントやディワリ(ヒンドゥー新年)の祭事も終わり、落ち着いてきたというところでしょうか。

今回の寄稿では、直近でのインドのスタートアップエコシステムについて紹介していきます。若干「冬の時代」が続いているような気もしますが、報道動静、ユニコーンや資金調達動静を見ながら紹介していきます。

1.2023年のインド報道(日本)を振り返る

この1年はずっとインド報道が過熱され続けてきたと感じています。振り返ると、2017年の安倍首相インド訪問から始まり要人が日本からインドに多数訪れ、2018年-2019年にインドブームが到来した時に近似しています。報道面で特筆すべきなのは、「インドの衝撃」から約15年ぶりにNHKがインド特集を組んだことでしょうか。

不思議とこの1年は様々なミッションや視察が組まれているような印象を受けます。僕も農業系にもかかわらず異業種の方から問い合わせをもらうことが多くなったような気がします。

<報道事例>

大手はもちろんのこと、新興メディアでもインド関連の特集が組まれることが増えたという印象です。

混迷の世紀 第10回 台頭する"第3極" インドの衝撃を追う - NHKスペシャル - NHK

https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/M7P7JV6G9X/

WBS35周年スペシャル インド 次のフロンティアの実力は?(テレビ東京、2023/4/4 22:00 OA)の番組情報ページ | テレビ東京・BSテレ東 7ch(公式)

https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_tvtokyo/program/detail/202304/14132_202304042200.html

スズキ、ソニー、日本信号、ヨネックスも 成長続けるインド市場に進出、しのぎを削る日系企業(AERA)

https://dot.asahi.com/articles/-/197545

世界経済における、インドの圧倒的「強さ」とは?(Newspicks)

THE UPDATE | 世界経済における、インドの圧倒的「強さ」とは? (newspicks.com)

「スタートアップ超大国」中国・インドの企みとは?(Newspicks)

NewSchool Movie | 「スタートアップ超大国」中国・インドの企みとは? (newspicks.com)

2.統計で見る2023年のスタートアップエコシステム

それでは、統計で見て、エコシステムがどうなっているか見てみましょう。まずはユニコーン数ですが、Venture intelligenceによれば、2023年もそろそろ終わってしまいますが、インドでは、まだ1件のスタートアップしかユニコーンクラブ入りしていないです。

Venture Intelligence Unicorn TrackerList of Indian Startups valued at $1 Billion or more.

Unicorn Startups in India | Venture Intelligence

捕捉:CB insights, traxcn, Craft, tech crunchもいいんですが、無料で一番正確にインドのユニコーン数やその拠点をカバーできているのはVenture Intelligenceですね。

<ユニコーン数の増加推移(上記リンクより筆者作成)>

資金調達環境についても、よくないという報道が多数見られます。

インド地場スタートアップメディアのInc42では、第三四半期レポート(2023年9月発行)で資金調達の苦境を述べるサマリーとなっています。

<サマリー>

急成長する新興企業への巨額投資に対する投資家の警戒感から、メガディール(1億ドル以上の評価額)は少なかった。2023年の年初来9ヵ月間に記録されたこうした取引はわずか17件で、2021年の68件、2022年の53件とは対照的である。この傾向は、収益性への関心の高まりとともに、新興企業セクターの市場調整を拡大させた。

Indian Tech Startup Funding Report Q3 2023 - Inc42 Mediaより引用。

TC(Tech Crundh)でも2023年6月時点の記事で資金調達額の減少についての報道が展開されていました。

<サマリー>

市場情報機関TracxnがTechCrunchに提供したデータによると、2023年上半期のインドの新興企業の資金調達額はわずか54.6億ドルで、2022年の同時期の171億ドルから68%、2021年上半期の134億ドルから大幅に減少した。

India's startup funding slides 68% after Tiger and SoftBank make virtually no deals | TechCrunchより引用。

私の居るアグリテック業界においても、インドのスタートアップは苦戦しているようです。デットやエクイティで調達できた会社は居ることにはいますが、本当に数えるほどで、他の業界に比べて厳しいといえるでしょう。理由としては以下のような要因が考えられます。

<要因>

1.ビジネスモデルが欧米乃至日本のタイムマシンモデルとなっている。サプライチェーンモデルはいわゆる日本でいうところの「農協」である。

2.農家からのマネタイズが難しく、面を広げれば広げるほど赤字が増していく。

3.特にサプライチェーンモデルはランニングコストが高くなってしまう傾向になり、面を広げれば広げるほど収益性を圧迫する。

<参照元>

Indian agritech startups saw 45% fall in funding between FY22 and FY23: report

https://economictimes.indiatimes.com/tech/funding/indian-agritech-startups-saw-45-fall-in-funding-between-fy22-and-fy23-report/articleshow/103926802.cms

ちょっと長くなってしまったので、前編はここで筆をおきます。

後編では、個別の話と現時点でのアクション内容についてご案内できればと思います。

 

Profile

著者プロフィール
永田賢

Sagri Bengaluru Private Limited, Chief Strategy Officer。 大学卒業後、保険会社、人材系ベンチャー、実家の介護事業とキャリアを重ね、2017年7月に、海外でのタフなキャリアパスを求めてYusen Logistics India Pvt. Ltdのベンガルール支店に現地採用社員として着任。 現地での日系企業営業の傍ら、ベンガルールを中心としたスタートアップに魅せられ独自にネットワークを構築。2019年4月から日系アグリテックのSAgri株式会社インド法人立ち上げに参画、2度目のベンガルール赴任中。

Linkedin: https://www.linkedin.com/in/satoshi-nagata-42177948/

Twitter: @osada_ken

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