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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

コロンビア大統領選!! 決戦は元ゲリラ軍 VS コロンビアのトランプ

©️YouTube - Colombia Election Runoff: Leftist Gustavo Petro Leads Presidential Vote But Faces Trump-Like Tycoon

先月29日コロンビアで大統領選第1回目の投票が行われました。(投票率は54.91%で、この数字は過去20年間に行われた5回の大統領選1回目投票の中で最も高かったようです。)

結果は得票率40%で左派のグスタボ・ペトロが首位。2位は独立派のロドルフォ・エルナンデスで得票率は28%でした。1位の得票数が過半数に達しなかったことから6月19日に行われる決選投票で次期大統領が決定することになります。

選挙運動が始まった頃から投票直前まで決選投票はペトロ氏と中道右派のフェデリコ・グティエレスの対決になるだろうと予測されていたことから、グティエレスの落選に驚きを隠せない国民も少なくないようで、エルナンデスの決選投票進出を「大統領選のサプライズ」として一部メディアでは報道しています。

私が住んでいるアンティオキア県では保守派が多く、3位だったグティエレスの人気は終始とても高いものでした。街にはグティエレスの応援ステッカーを貼っている車で溢れ、道端の看板もグティエレスで埋め尽くされていた事から、グティエレスの決選投票進出は当然だと思っていましたが、蓋を開けてみればグティエレスの得票数が1位だったのはアンティオキア県のみ。右派を倒したぞ!と国の大部分が歓喜している中、私が住んでいるアンティオキア県は肩を落とした人がさぞかしたくさんいることでしょう。

 

左派 グスタボ・ペトロ

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©️You Tube - Colombia election: Leftist Gustavo Petro to face millionaire Rodolfo Hernandez l DW News

グスタボ・ペトロは左翼ゲリラ軍のメンバーだった過去を持つ62歳。首都ボゴタの市長を務めた経験もあります。前回初めて挑んだ大統領選では決選投票に進むものの、現イヴァン・ドゥケ大統領に敗退。今回が最後の大統領選出馬であることを表明しています。
ペトロは貧困層や若者を中心に人気が高く、これまで国に見捨てられ苦しい生活を強いられて来た国民からの支持を多く受けているようです。県別の得票率を見てみても、武装勢力による支配を受けている地域はペトロが優勢となっていることから、年々治安が悪化していくコロンビアの現状を変えて欲しいという国民の強い想いが票となって現れているという見方もできるかもしれません。

一方保守派からはネガティブなイメージを持たれることが多く、大きな変化を望まない富裕層からの支持が特に低いように感じます。近年、中南米では左派の大統領が次々と誕生している傾向がありますが、保守派の中には「コロンビアの大統領が左派になると経済危機に陥っている隣国ベネズエラと同じようになってしまう」とペトロを批判する声も多く聞かれています。

一部の日本の報道では、ペトロが大統領になるとアメリカとの関係が悪くなる可能性があると指摘されていますが、現地の専門家はその可能性は極めて低いとコメントしています。

 

独立派 ロドルフォ・エルナンデス

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©️You Tube - Colombia election: Leftist Gustavo Petro to face millionaire Rodolfo Hernandez l DW News


「今選挙のサプライズ」と言われたロドルフォ・エルナンデスは77歳の実業家。右派や左派などこれまでの政治を基準としない独立派として出馬したエルナンデスは「アンチ汚職」を掲げることで、汚職が当たり前になってしまっている今までの政治にうんざりしている国民の支持を集めています。しかし放送禁止用語を連発したり、ブカラマンガ県知事時代に議員を公の場で平手打ちしたりと、自由奔放過ぎる言動が絶えないことから「コロンビアのトランプ」と表現されることもあります。

決選投票進出が決まったあと「女性は家で子育てに専念するのが理想的」と発言し、女性を中心に大きな反発を買ってしまったエルナンデス。以前は賛成していたフラッキングによる石油採掘に急に反対したり、決選投票前のペトロとのディベートを拒否する事を宣言したりと最近不安定なエルナンデスですが、左派の大統領誕生を阻止したい右派からの支持を集めており、支持率はどんどん伸びています。

 

コロンビアに変化を

コロンビアでは歴史的にずっと右派が政権を握って来ました。「右派の右派による右派のための政治」のサイクルが続いていたコロンビアについに変化の時が訪れたようです。

昨年4月19日パンデミック真っ只中に打ち出された増税案をきっかけに国民の怒りが大爆発し大規模なデモ活動に発展しました。デモ隊に大勢の死者が出るほど暴力的にデモを鎮圧しようとした事が火に油を注ぐかたちとなり、国民の右派の支持後退に拍車がかかる形となったのです。

今回の選挙でペトロやエルナンデスに投票した人々は、国民の声に耳を傾けない上に治安も失業率も悪化の一途を辿る今のコロンビア政府に「変化」を求めているのでしょう。さて、決選投票で勝つのは元ゲリラ隊員ペトロか、「コロンビアのトランプ」エルナンデスか。開票になるまで結果は全く予想がつきません。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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