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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

街が花で埋め尽くされた、チェルシー・イン・ブルーム

エリア全体が花で飾られるチェルシー・イン・ブルーム。「英国を象徴するもの」という今年のテーマでは、紅茶やお茶会も人気のモチーフだった。中でもこのイベントで銀賞を獲ったこの作品は、茶色の葉で紅茶がリアルな上に美しかった。筆者撮影

 5月、6月の英国は、さわやかな緑と色とりどりの花に囲まれる。日も延びて、夜の8時を過ぎても明るい、気持ちのいい季節だ。

 毎年5月の終わりには有名なチェルシー・フラワーショーが開かれる。王立園芸協会が主催するこの園芸の祭典では、広い会場に珍しい花や植物、工夫をこらした庭のデザインなどが展示される。国営放送BBCでも連日テレビ中継され、ロイヤルファミリーやセレブも訪れる人気のイベントで、今年は5日間で17万人が入場した。

 わたしは花も木も庭も好きなので、3年前に初めてこのショーに行ったときには夢のような1日を過ごした。会場の内外に同じようにふわふわした人がたくさんいて、チェルシーの街が幸せな雰囲気に包まれていたことを思い出す。ただこのショーのチケットは1日券で110ポンド(約1万7000円)と高価だし、人気が高いだけにチケットが取りにくい。

 でも2006年からはこのショーも別の楽しみ方ができるようになった。期間中、会場の近くでフラワーショーの気分が味わえるチェルシー・イン・ブルームというイベントが開かれるのだ。フラワーショーが上流中流向けだとすると、誰でも自由に見学できるこちらは庶民派と言えるかもしれない。今年は5月23日から28日まで開かれた。

 チェルシー・イン・ブルームは、地域の店や建物を花で飾るイベントだ。と言っても単純な飾りではなく、人やものをかたどったり、動く工夫がされていたり、遊び心のあるデザインだったりして、見て歩くのに飽きることがない。ハイブランドも多いエリアなので、マーケティングも兼ねて毎年華やかな力作が並び、すぐれた作品には賞も贈られる。

 展示は、地下鉄の最寄駅になるスローン・スクエアを中心に、高級デパートハロッズの方向やキングス・ロードの西の方までと、かなりの範囲に広がっている(今年の展示の地図はこちら)。わたしはひとりで1時間半以上ひたすら歩き回ったのに、全体の半分を見るのがやっとだったくらいだ(結局もっと見たくなってしまい、期間が終了した翌日も、残された展示を見に出かけた)。小売店だけでなく、銀行や病院やホテルも思い思いの花を飾るので、街全体がクリスマスのように華やぐ。

チェルシー不動産屋 - 1.jpeg

(イベントに参加した不動産屋さんのディスプレイ。「売り家/売約済み」というお決まりの看板を花で表現した遊び心が楽しい。筆者撮影)

 土曜の朝10時にチェルシーに着くと、すでにかなりの人出があった。カップル、家族連れ、園芸好きそうなグループ。日本人もずいぶん見かけたし、チェルシー・フラワーショーと同じように、花に負けない色鮮やかなファッションに身を包んで楽しむ人もいた。

 このイベントでは毎年テーマが与えられるが、今年のテーマはBritish Icon(英国を象徴するもの)だった。ちょうどエリザベス女王在位70周年のお祝いを翌週に控えていたこともあって、女王をイメージした作品がとても多かったと思う。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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