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人情味の溢れる台湾で暮らす日々

河浦美絵子|台湾

デジタル先進国といわれる台湾でセルフレジがいまだ普及していない理由

そんなデジタル先進国の台湾であれば、レジのデジタル化、セルフレジの導入が全国的に進んでいても良さそうなものだ。

外資系のスーパーマーケットを中心に数年前からセルフレジの導入は開始されてはいる。しかし、いまだ台湾人は有人レジを好む傾向が強い。日本とは逆で、有人レジが行列を作っているにもかかわらず、セルフレジの利用者がほとんどいないという光景も見かける。

セルフレジについての台湾のネット上の声を拾ってみると「システムがわかりにくい」「スキャンの反応が悪くて効率が悪い」「やり方がわからない客に時間がかかって有人レジより時間がかかった」「セルフレジだと割引の適用がなかった」などがあった。それ以外に機械のみで決済することに「寂しい」「冷たく感じる」という意見も多かったのだ。

■台湾では買い物はコミュニケーションの場

台湾には伝統市場が多く存在する。食材、衣類、雑貨、なんでもありの伝統市場。そこでの買い物に会話は欠かせない。値段の確認、注文、支払い、値引き・・・店員と客が一切話さずに買い物はほぼ不可能だ。

④.jpg店員と客との会話が飛び交う台湾の伝統市場 (筆者撮影)

台湾人は日常生活の中で、人と接することを好む傾向が高い。人に興味があるし、人に話しかけることに抵抗が少ない。

私も買い物の最中には様々な人から話しかけられる。「今日はこれがおすすめだよ」「3つで100元にしておくから買っていってよ」といった買い物の内容だけでない。「日本人か?」「日本のどこから来たのか?」「そのエコバック、どこで買った?」「台湾に嫁いできたのか?」などとかなりプライベートなことまで話題になる。時には横にいる見知らぬ客が会話に参入してくるさえある。まるで昔からの知り合いのように。

⑤.jpg人と人との距離が近い台湾 (筆者撮影)

こんなにぎやかな交流が日常的にある環境にいれば、誰とも会話をせず、黙って完結するセルフレジでの買い物を、台湾人が「寂しい」「冷たい」と感じるのはやむを得ないのかもしれない。

■無人店舗とセルフレジの導入

そんな中、台湾のコンビニエンスストアを中心に、現在、無人店舗やセルフレジの導入を進める動きもある。

台湾セブンイレブンは昨年、NECグループ、統智科学技術等と4年の時間と11億台湾ドルを投資して製造したX-POS機を、台湾全国の6,500店舗、1万4000台を設置していくと発表した。X-POS機は顧客情報管理、商品の販売や在庫管理、売上集計決済処理などの機能を統合しているコンピューターシステムだ。

同時に顔認証やスマホの番号で入店しセルフレジで精算できる、未来コンビニとも呼ばれる無人コンビ二「X-STORE」を展開している。

⑥.jpg無人コンビニ「X-STORE」の入り口。会員登録した電話番号入力により入場が可能:店舗の許可を得て筆者が撮影

しかしこちらも、まだ利用者がそこまで増加していない印象だ。通常の店舗と隣接しているX-STOREに行ってみたが、通常店舗は混んでいるのに、X-STORE内はがらがらであった。

⑦.jpg利用者が少ない無人コンビニ:店舗の許可を得て筆者が撮影


■台湾のセルフレジの普及に必要なこと

日本ではフルセルフレジが導入される前に、セミセルフレジが先に普及したように思う。これによって客は自己サービスに徐々に慣れていった。時間の節約やスピーディな買い物が可能な体験をして、その利便さを感じセルフレジ利用率が向上しているのだろう。

台湾ではセミセルフレジの導入は少ない。そのため、いきなり無人店舗やフルセルフレジが設置されても客は戸惑い、使いこなせず、その煩雑さを避けるために有人レジに並ぶ。

⑧.jpg無人コンビニに設置されたフルセルフレジの体験版:店舗の許可を得て筆者が撮影

それでも店舗側は今後もセルフレジの導入の数を増やしていく方向だ。

利用者の増加を促すために、セルフレジで購入すれば、有人レジより価格を10%安くするなど、客にとってスピードや利便性以外のメリットを提供する方法も採用している。

伝統的な有人レジと未来型のセルフレジ。今後、台湾人はどちらを選んで買い物をするのだろう。さらに考察を続けていこうと思う。

 

Profile

著者プロフィール
河浦美絵子
海外在住30年。現在、台湾在住21年目。ライフコーチ兼リサーチャー。現地コンサルティング企業勤務を経て起業。キャリアトランジション、自己啓発の専門知識を活かして、日系企業や個人向けにライフコーチングとリサーチサービスを提供している。趣味は旅とマラソンと食べ歩き。

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