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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

イタリア 規制の緩和・気が緩む人たちと感染の不安の間で

電車がローマ・テルミニ駅に着く前に、マスク未着用者に対する取り締まりを行う警察官 photo: Naoko Ishii 2022/7/1

 いつまでもこわがって、家に閉じこもっていてはいられない。人と接することも経済を回すことも必要だ。それは分かるものの、新型コロナウイルス感染症に現在感染している人が、イタリア全国で12万7千人を超え、住民10万人あたり2千人を超えているというのに、にも関わらず、規制が緩やかに解除されていき、また、マスクにもうんざりして、今はかかってもインフルエンザのようなものだと思い込んだ人たちが、マスクなしに近寄って話をしてきたり、マスクを装着すべきである数少ない場所でさえつけなかったりするようになり、わたしは以前よりも今の方が、不安を感じることが多くなりました。

 ペルージャでも、そして、わたしの身の回りでも、友人や親戚の間で、かなりの人数が特に最近になって感染しています。しかも、尋ねてみると、いったいどこで感染したのか分からないという場合が少なくないのです。まったく何も症状がない人もいれば、39度の熱が出て、しばらくは頭がくらくらする日が続いたという親戚が複数います。以前に比べれば、感染者数に対して、一般病棟・集中治療室に入院したりする人の割合、また亡くなる人の割合は、ずっと少なくなっています。けれども、集中治療室に入院する人も亡くなる方も、今も相変わらずいて、自分や大切な家族が、いつそうならないとは限りません。

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ミニメトロのガラス窓に貼られたマスク着用義務を言葉と絵で説明する掲示 photo: Naoko Ishii 2022/7/1

 7月1日に、日本大使館で在外投票をするために、電車でローマに行ったとき、ペルージャで乗ったミニメトロには、英語を話す若い外国人観光客がたくさんいたのですが、その中の誰一人として、マスクをしていませんでした。マスクをつけていたのがわたしだけだったので、かえって、マスクは不要になったのだろうかと思ったほどです。けれども、帰りに乗ったとき、ガラス窓の掲示を見ると、そして、今調べてみると、公共の交通機関では9月30日まで、FFP2マスクの着用が義務となっています。

 一方、この日、ペルージャからローマに向かう電車の中でわたしが見かけた人は、皆がFFP2マスクをきちんとしていました。途中駅で、大きな旅行カバンを持つ若者たちが大勢乗り込んできて、引率教員と思われる人が、車両を回って、「マスクをきちんとつけなさいよ」と言って回っていました。けれども、中にはマスクを着用していない生徒がいたようで、未着用者に対する取り締まりをしていた警官から、次の駅でいっしょに降りて罰金を払うように言われていました。こんなふうに、きちんと取り締まってくれていれば安心なのですが、ペルージャのミニメトロのように、取り締まりが行われず、皆がマスクなしで乗り込み、おしゃべりをする車内では、重症化の危険があっても、健康上の理由からワクチンを受けられない人や高齢者が、感染してしまう恐れがあります。

 イタリアでは今のところ、陽性と発覚した人と濃厚接触をしている場合も、症状が出なければ検査をする義務はなく、接触から10日経てば、自由に出歩けることになっているのですが、無症状の場合もあれば、接触した直後に結果が陰性と出ても、その後陽性となり、けれども無症状のままであり続ける場合もあると思います。そうして、そんなふうに、家族が感染したのに、自分は検査をせずに出歩いている人が、話に聞くだけでも少なくないのです。

 個人授業で教えている生徒の家に行って、屋内で授業をしても、マスクをしているのはわたしだけです。旅行には行きたいけれども、レストランやバールでも、中で働く人でさえ、マスクの着用義務がなく、またそうした人たちが感染していないとは確信できない状況でもあり、なんだか、何かのきっかけでうっかり感染してしまえば、それで旅行を中断したり、体調を崩したりすることになってしまうロシアンルーレットのような危険が、経済を回すため、社会生活を人が再び営めるようにするための規制解除によって増えたような、そんな気がしています。というわけで、こういう状況の中、自分と大切な人の命と健康を守るために、必要を感じるときには今後もマスクを着用し、できるだけしばしば手なども消毒していくつもりでいます。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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