コラム

統一教会問題、今も解消されない根本的な疑問

2022年09月21日(水)15時55分
周 来友(しゅう・らいゆう)
旧統一教会

KIM KYUNG HOON-REUTERS

<あれこれ調べても、納得がいかない。なぜ日本の保守政治家たちは、韓国の「反日」宗教団体と手を結んだのか。誰か教えてほしい>

外国人として、第三者として、どうにも解せないことがある。いま世間を騒がせている旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と日本の政治家との関係だ。

これは私だけでなく、多くの人が首をかしげていることだと思うが、日本の「嫌韓」保守政治家たちはなぜ韓国の「反日」宗教団体と手を結んだのか(それも、9月8日の自民党の発表によれば179人も!)。

自分たちの支持者である保守派がこれを知ったらどう思うか。そうしたことに考えが及ばなかったのだろうか。中国のネット上にまで「なぜなんだ? 誰か教えてくれ!」という声が噴出している。

テレビ朝日の『朝まで生テレビ!』で、田原総一朗さんが公明党議員に「統一教会と創価学会はどこが違うんだ?」と直球の質問を投げ付けているのを目にした。追及を受けた議員はばつが悪そうな表情を浮かべていた。

双方とも日本の政治に深く食い込んでおり、確かに似ている点があるかもしれない。

ちなみに信教の自由がない中国からすれば、統一教会は明らかな「邪教」で、取り締まる対象。一方、「友好団体」と言われる創価学会も、実は以前から警戒されている。いくら日中国交回復に貢献したと自負していても、中国で布教はできない。前者同様、「新興宗教」の範疇に入っているからである。

だが統一教会は韓国の宗教、創価学会は日本の宗教、という大きな違いがある。どちらかと言えばリベラルで「親中」の創価学会に対し、統一教会は「反共」を掲げている点も異なる。

反共産主義的な側面だけ見れば、日本の保守政治の「反中」姿勢と相性がよかったと言えるかもしれない。だが統一教会は、日本は韓国に贖罪すべしと教え、霊感商法で日本の家庭から金を巻き上げ、合同結婚式で日本の女性を韓国に嫁がせた団体だ。

日本はカモにされている。これは昨今初めて明るみに出た事実ではなく、自民党の先生たちが知らなかったはずもない。

私自身、あれこれと調べてみたが疑問は消えない。ニューズウィーク日本版で2週前に「統一教会 虚像と実像」と題した特集を組んでいたのでそれも目を通したが、石戸諭氏のルポによると、統一教会は保守派にもリベラル派にも食い込もうとしていたという。

これではますます訳が分からない。結局、日本の保守派にとって「反中」も「嫌韓」もご都合主義のスローガンにすぎなかったのか。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

PIMCO、金融緩和効果期待できる米国外の先進国債

ワールド

AUKUSと日本の協力求める法案、米上院で超党派議

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、S&Pは横ばい 長期金利

ビジネス

エアビー、第1四半期は増収増益 見通し期待外れで株
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story