コラム

反アマゾン:独立小売業の変革を推進する「アンカーストア」の急成長

2022年03月02日(水)15時00分

欧州全域への拡大

直近の資金調達により、アンカーストアは地理的に拡大し、欧州の中核市場での活動を加速させている。現在、アンカーストアはEU内の23カ国で事業を展開しており、パリ、ロンドン、ベルリン、アムステルダム、ストックホルムにオフィスを構えている。2022年にはイタリアとスペインにオフィスを開設する予定で、ブランドや小売店のできるだけ近くにいることを目指している。

これは、独立系小売業に力を与えるというアンカーストアのミッションの始まりに過ぎない。ブランドや小売業者との連携を強化するとともに、小売業者がリスクなく簡単に商品を注文できるよう、最高の顧客体験を提供するための現地販売とカスタマーサポートの整備を進めている。今後は、新しい製品カテゴリーや機能を追加することで、水平方向と垂直方向の両方で規模を拡大していく予定だとのこと。

アンカーストアとしての地域小売店

アンカーストアは最近、コア製品カテゴリーに「スポーツ&ウェルビーイング」と「ペット」という2つの新しいカテゴリーを追加した。小売の用語で 「アンカーストア 」とは、人の往来を促し、注目を集める店のことである。アンカーストアは、独立系小売業者が地域の 「アンカーストア 」となることを望んでいる。

厳選された商品を適切な価格で提供し、それを顧客のユニークで特別な体験と結びつけることを支援するアンカーストアは、ブランド、小売業者、消費者のすべてが繁栄するエコシステムを構築し、彼らと共に、独立系小売業の未来を築きはじめている。

アンカーストアは、小売のための次世代オペレーティングシステムを構築し、急速に拡大する国境を越えた卸売ネットワークを通じて、世界中の何千ものブランドと独立系店舗に最高クラスのインフラを提供しているのだ。

このマーケットプレイス・プラットフォームは、独立系ブランドやデザイナーと、欧州各地の登録小売店、花屋、コーヒーショップなどのコンセプト・ストアを結びつけ、大手ECサイトや大手小売チェーンにはない、より多彩な商品の販売を実現した。

アンカーストアが印象的なのは、アマゾン一色になっていく人々の買い物習慣を変えたいと考えた4人のフランス人Eコマース起業家が設立し、2019年のローンチからわずか2年で、ユニコーンの地位に到達したことだ。

「私たちは起業家であり、投資家であり、父親であり、子供がいて、ソファに座ってテレビを見て、アマゾンで注文したら商品が送られてきて、家から出ないという世界にはしたくない」と、同社の共同創業者でCEOのニコラ・ダディフレ氏は語っている。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英建設PMI、4月は約1年ぶり高水準 住宅部門は不

ビジネス

円安、政策運営上十分に注視していくこと確認した=首

ワールド

イスラエル軍、ラファ検問所のガザ側掌握と発表 支援

ビジネス

アングル:テスラ、戦略転換で幹部続々解雇 マスク氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story