「拡張するインターネット」としてのドローン
ドローンの未来は始まったばかり スイスのSwiss Post、Swiss WorldCargo、米Matternetの3社は、ドローンの物流商用利用に向けて、実証試験を実施。 Pierre Albouy-REUTERS
仕事柄なのかわからないが、しばしば「インターネットの次に来るのは、なんでしょうか?」と尋ねられる。Appleが創業した1976年から二十年後の1995年に登場したマイクロソフトのOS「Windows95」までが、いわゆる「パーソナル・コンピュータ革命」だとするなら、1996年から昨年2015年までは、「インターネット革命」の二十年間だと言っても間違いないだろう。では一体、これからの二十年間は、どんな変化が起きるのだろうか? それは「拡張するインターネット」に違いない。
未来は常に"怪しいバラ色"だ
2016年現在、インターネットの端にある「端末」は、スマートフォンやパーソナル・コンピュータだ。だが、これから二十年かけて、あらゆるものがインターネットに接続される。冷蔵庫やトースター、自動車、そして人間の身体そのものが、次々とインターネットにつながることになるのだ。
IBMリサーチセンターによれば、2020年までに(あと4年後だ!)2120億個のセンサーが様々な機器に搭載され、そのうち300億個のマシンがネットワークにつながると予測している。センサー数だけを考えれば、2020年の時点で地球上の全人口の28倍にも達し、この勢いは加速度的にその後も増え続けることになる。時代は、いよいよ「スマートフォン」から「スマートプラネット」へと移行する。ちなみにAIGの予測では、2020年には450億個のディバイスがネットワークに接続されるという。
改めて文字にすると不気味だと感じる方もいると思うが、すでに、誘拐などの犯罪を防ぐために、GPSを体内に埋め込むサービスもはじまっている。十年ほど前、「近々、皆さんのポケットやカバンなどのすべてにGPSが入ることになる」と話したら、同じように不気味に感じられたことだろう。しかし、それは既に「現実」である。未来は常にバラ色ではなく、"怪しいバラ色"というが真実なのだ。
クリス・アンダーソンがドローンの可能性に賭けている
さて、最近はモノのインターネット化を指す「IoT」(Internet of Things)や、工業のデジタル化を指す「インダストリー4.0」なる言葉もあるが、すべて「拡張するインターネット」のことに他ならない。各家庭にある家電製品から工業用機械まで、あらゆるハードウエアがネットワークにつながり、そのいくつかは自動制御されるのだが、これまでと最も異なるのが、空を飛ぶことが可能なドローンの登場だ。
IT業界きっての識者として「フリー」や「ロングテール」などの著作で知られる米Wired誌の編集長だったクリス・アンダーソンは、3年ほど前に絶筆宣言し、自らドローンの製造販売会社を起業した。Time誌に「世界で最も影響力がある人物100人」(07年)に選ばれたこともある彼は、それまでのキャリアを投げ打って「拡張するインターネット」としてのドローンの可能性に賭けたのだ。昨年、バークレーに住むクリス・アンダーソンに話を聞きに行くと、彼は「現実世界のグーグル」を考えていると明言した。空をドローンが飛び交い、現実世界の情報をドローンが集めてくる様を、「ディジタイジング・ザ・ワールド」と、彼は何度も僕に話した。
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