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解党処分の是非

タイ最大野党・前進党の解党で抗議デモの嵐が再び?

No End to This Taboo?

2024年4月10日(水)14時00分
セバスチャン・ストランジオ(ディプロマット誌東南アジア担当エディター)
解党命令が下れば、ピター(中央・左)らは政治活動を禁じられる可能性が CHALINEE THIRASUPAーREUTERS

解党命令が下れば、ピター(中央・左)らは政治活動を禁じられる可能性が CHALINEE THIRASUPAーREUTERS

<不敬罪改正を掲げる前進党の解党を審議、消滅なら反対派はさらに過激化しかねない>

異論はまたも封じられるのか。タイの憲法裁判所は4月3日、民主派の最大野党・前進党の解党処分の是非について審議すると発表した。

同党は昨年の総選挙で、刑法112条(不敬罪)改正を公約の1つに掲げた。刑法112条では、国王などに対する侮辱や批判的発言が厳罰の対象になっている。今年1月、憲法裁判所がこの公約を違憲と判断。今回の発表は、選挙管理委員会が3月中旬に、前進党の解党処分を同裁判所に求めたことを受けたものだ。

「前進党の選挙法違反の可能性を検討すべき合理的根拠がある」と、憲法裁判所は声明で述べた。同党には、15日以内に文書で弁明するよう命じたという。同期間の終了直後、判断が下されるとみられる。

同裁判所は1月の違憲判決で、刑法112条改正という公約はタイの立憲君主制を覆す試みに当たると判断。前進党はそうした意図を否定し、解党処分審議の決定を受けて「弁護を用意し、あらゆるシナリオに備える」と、党の広報担当者は語っている。

前進党は昨年5月に行われた総選挙で、独占事業の解体や徴兵制廃止を含む革新的公約を掲げて第1党に躍進した。だが軍政時代の任命議員が一定数を占める上院は、前進党のピター党首(当時)の首相選出を否決。以来、同党が政治的異論を封殺するツールとみる刑法112条の改正公約が法の追及にさらされている。

憲法裁判所の今回の発表で、前進党は前身である新未来党がたどった道と同じく、解体にさらに近づくことになる。予想どおりに解党命令が出れば、ピターをはじめとする党幹部は長期間、政治への参加を禁じられるだろう。

2019年総選挙で存在感を示した新未来党は翌年2月、憲法裁判所に解党を命じられた。併せて、党設立者らが10年間の国政被選挙権喪失・政治活動禁止処分を受けた。

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