「最悪の事態に備えるべきだった」...欧州が「トランプ再選」に今からでも真剣に向き合わなくてはならない理由とは?
EXISTENTIAL STAKES
トランプとプーチンの「蜜月」も復活か(2018年7月) KEVIN LAMARQUEーREUTERS
<バイデン大統領の再選でアメリカが防衛のコミットメントを維持するという最善のシナリオを期待するのではなく、2016年には最悪の事態に備えなければならなかった>
2025年にトランプ前大統領がホワイトハウスに戻ってくる可能性は、ヨーロッパの安全保障を重大な脅威にさらしている。ヨーロッパ諸国は手遅れになる前に、ロシアのプーチン大統領の失地回復戦略に基づく侵略に対して防衛を強化しなければならない。
アメリカが欧州防衛のコミットメントを放棄するという脅しを、無節操なトランプが行動に移す見込みは非常に憂慮すべきもので、大半のヨーロッパ首脳は現実から目を背けようとしている。
しかし、トランプが共和党の候補指名を獲得することはほぼ確実となり、その復権は現在進行形の危機だ。
トランプは在任中、NATOから脱退すると繰り返していた。同盟国が攻撃を受けてもアメリカは防衛しないと宣言するだけで、ヨーロッパの安全保障は骨抜きになる。
実際、NATO加盟国がロシアの攻撃を受けたとしても拠出金の負担が足りない国なら、ロシアに「好きなようにするよう伝える」と在任中に語ったことを、トランプは自ら明かした。
ヨーロッパは、バイデン大統領の再選でアメリカが防衛のコミットメントを維持するという最善のシナリオを期待するのではなく、最悪の事態に備えなければならない。
理想を言えばこうした準備は、14年にプーチンがクリミアを併合した後か、16年にトランプが当選した後に、もっと早く始めるべきだった。
10年前に下地ができていれば、EUは今頃、強化された共同防衛研究や、より効率的な軍事調達戦略の恩恵を受けていたかもしれない。少なくともロシアがウクライナに侵攻してからの2年間で、もっと多くの国がポーランドやエストニアのように国防予算を大幅に増やすべきだった。
ヨーロッパは今こそ行動する責任がある。まず、ウクライナへの戦争支援を強化しなければならない。米下院の共和党多数派は、614億ドルの追加支援を含むバイデン政権の法案に反対している。
今のところ、ウクライナで敗北しなければ、プーチンが他のヨーロッパ諸国を攻撃しようとすることは明らかだ。既にクレムリンは極右・極左の反EU政党に資金を提供し、選挙の際に偽情報をソーシャルメディアで拡散して、ヨーロッパの民主国家を不安定化させようと動いている。