最新記事
防空システム

ロシアの大規模ドローン攻撃からウクライナの空を守る「マートレット」ミサイルとは

What are Martlet missiles? Ukraine's NATO-made laser-guided drone busters

2023年12月7日(木)19時49分
エリー・クック
軽量多目的なドローンバスター、マートレット

軽量多目的なドローンバスター、マートレット Thales

<ロシアのインフラ攻撃が激化し、何より防空能力が求められるウクライナで、イギリスが密かに供与した軽量多目的ミサイルが200機超のロシア・ドローンを叩き落とした>

<動画>軽量ながらドローンバスターとして威力を発揮するマートレット

ロシア軍の大規模なドローン攻撃が続くなか、ウクライナ軍はイギリスから供与を受けたレーザー誘導式ミサイル「マートレット」を使って撃墜しているようだ。

12月2日付の英タイムズ紙によれば、ウクライナ軍は11月下旬に首都キーウを狙って飛来したロシア軍の自爆型ドローン「シャヘド」の大群に、マートレットで対抗したという。キーウ地域を担当するウクライナ軍の司令官は同紙に対し、マートレットでロシア軍のドローン計213機(自爆型ドローン「ランセット」や偵察ドローン「オルラン」も含む)を破壊したと語った。


ロシアによるウクライナへの本格侵攻が始まって21カ月。ロシア軍はウクライナのエネルギー関連施設や物流拠点を狙ったミサイル攻撃やドローン攻撃を繰り返しており、冬を迎えたウクライナにとっては防空能力の強化が最優先だ。

イギリスがウクライナに対して密かにマートレットを供与していたらしいことが明らかになったのは2022年4月半ば。ウクライナ軍の第95独立空中強襲旅団防空部隊がこれを使い、ロシア軍の偵察ドローン1機を破壊したと報じられたのだ。

ある防衛関係者はタイムズに対して、マートレットは当時、防空支援の一環としてウクライナに供与されたと明かした。姉妹ミサイルの「スターストリーク」と共に供与され、2022年3月末からウクライナ軍が運用を開始した。

地・海・空のどこからでも発射可能

英国防省は2022年10月の声明で、ウクライナの防空体制を充実させておくことが「これまでもこれからも、イギリスの軍事支援における優先事項」だと述べた。「我々はこれまでも、携帯式防空ミサイルシステムのスターストリークを搭載した装甲車や数百発にのぼる地対空ミサイルなどさまざな防空システムを提供してきた」

また前述の防衛関係者は、「マートレットはイギリスが供与した発射台と互換性があるし、マートレットのような軽量多目的のミサイルは無人機を攻撃するのに適している」と述べた。

マートレットは軽量の精密打撃ミサイルで、空、海と地上のどこからでも発射できる多目的型。製造元によれば、装甲車両や無人機をはじめ、無数の脅威を排除する能力がある。

軍事専門家のデービッド・ハンブリングによれば、マートレットは元々、海上で船舶を破壊するための兵器として開発されたが、地上の標的を攻撃するのにも効果を発揮した。また製造元のタレス社は、マートレットは「都市環境向け」に設計されているため「巻き添え被害が少ない」としている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国地裁、保守系候補一本化に向けた党大会の開催認め

ビジネス

米労働市場は安定、最大雇用に近い=クーグラーFRB

ワールド

パナHDが今期中に1万人削減、純利益15%減 米関

ビジネス

対米貿易合意「良いニュース」、輸出関税はなお高い=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中