最新記事
ガザ侵攻

ハマスの地下トンネルに海水を注入する作戦、イスラエルは本当に決行するか

Will Israel Flood Gaza Tunnels To Force Out Hamas? What We Know

2023年12月7日(木)17時00分
デービッド・ブレナン
ハマス兵士

地下トンネルで攻撃準備をするハマス兵士。車が走れるほど広い場所もあるという(イスラエル軍のSNSより) IDF/YouTube

<イスラエル軍が手を焼いてきたハマスの巨大な地下トンネル、大量の海水注入という奇策の実行に向けてポンプも建設。本当にやるのか>

<動画>イスラエル軍が地下都市と呼ぶハマスの地下トンネル

 

ガザ地区の地下に迷宮のように張り巡らされたトンネル網に大量の海水を注入し、そこに隠されたイスラム組織ハマスの基地を、隠匿された武器もろとも水没させる──イスラエル軍はハマス「殲滅」作戦の一環として、そんな計画を検討しているようだ。

イスラエル軍は11月、既に制圧したガザ地区北部のガザ市にあるアルシャティ難民キャンプ近くに大型ポンプ5基を建設したと、12月4日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が匿名の米高官の話として伝えた。

ポンプを稼働させれば、地下の広大なトンネル網を何週間かで水没させることが可能だという。イスラエル政府はこの計画について米政府とその同盟国に知らせたが、実行するかどうかは未定だと、WSJは伝えている。

「トンネルとそれを取り巻く地面について、詳しいことは誰も知らないため、計画が成功するかどうかは分からない」と、この計画をよく知る匿名の情報筋はWSJに語った。「誰も入ったことのないトンネルに海水がどう流れるかは分からず、計画の有効性は推測できない」

計画実行をためらう理由

ネット上には建設中、あるいは稼働中のイスラエル軍のポンプと称して、真偽の不確かな動画が出回っているが、イスラエル政府はそれらの動画についても、WSJの記事についても、コメントを拒んでいる。

「この件に関しては、何も言うことはない」と、イスラエル軍報道部は12月6日早朝、本誌の問い合わせに回答した。

イスラエル政府のアイロン・レビー報道官は5日、エルサレムの記者クラブでのブリーフィングで、「当然ながらイスラエル軍はさまざまな工学的手法を使うが、どんな手法を使うか、使用を検討しているかは、ここでは言えない」と述べた。

イスラエル軍がガザ南部に侵攻を開始し、国際社会は民間人の死者が多数に上ることを懸念しているが、これについてレビーは本誌に対し、イスラエル軍はハマスを撲滅するまで攻撃の手を緩めないと断言し、ハマスの戦闘員は「逃げも隠れもできない」と述べた。

本誌はハマスの報道官にもメッセージアプリのワッツアップを通じてコメントを求めている。

トンネルに海水を注入する計画については、イスラエルの高官の間でも懸念の声が聞かれると、WSJは伝えている。トンネルから流れ出た海水や有毒物質が周囲の環境に染み込み、ガザの帯水層や土壌の汚染がさらに進む可能性があるからだ。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

グローバルな経済環境、今後も厳しい状況続く=英中銀

ワールド

モスクワ軍事パレード、戦闘用ドローン公開 ウクライ

ワールド

ロシアで対独戦勝記念式典、プーチン氏は連合国の貢献

ビジネス

三井住友銀行、印イエス銀の株式取得へ協議=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中