最新記事
ASEAN

900キロを実際に走行 ...インドシナ半島の大動脈「南部経済回廊」から見たASEANの連結性強化

2023年12月15日(金)16時00分
※JICAトピックスより転載
南部経済回廊上のつばさ橋

南部経済回廊上のつばさ橋

<JICAが20年以上前から整備に協力してきた「南部経済回廊」は、約1千キロにわたってインドシナ半島南部を横断する交通と物流の大動脈だ。そのうち、ベトナム・ホーチミンからカンボジアを経てタイ・バンコクに至る900キロをJICA職員らが実際に走行し、ASEAN域内の連結性の現状と課題を探った>

日本とASEANの友好協力50周年を機に、日本およびJICAがASEANと共に築いてきた信頼と発展の足跡を振り返り、未来に向けたパートナーシップ像について考えたい。本記事では、ASEANが一つの地域として発展し、日本とともに成長するために重要な「連結性」について取り上げる。ASEANの国々を道路でつなぐ経済の大動脈「南部経済回廊」をJICA職員らが実際に走行し、連結性の現状、そして強化に向けた課題を探った。

■関連記事:目標だった「福田ドクトリン」は今や現実に 日本とASEAN50年の歩みと、これからの協力関係

◇ ◇ ◇


連結性強化で、国を越えた往来を活性化

南部経済回廊は、ベトナムからカンボジア、タイ、そしてミャンマーへと約1千キロにわたってインドシナ半島南部を横断する、交通と物流の大動脈です。道路や橋梁などの運輸インフラを包括的に整備することで域内の連結性を高め、国をまたいで人やモノが活発に移動できるよう、JICAはアジア開発銀行(ADB)や世界銀行と共に、20年以上前からこの南部経済回廊整備への協力を進めてきました。

国境をまたぐ経済回廊のスムーズな往来は、域内の連結性を測る一つの指標です。ASEANの発展に欠かせない連結性強化への協力が、はたしてどのように機能しているのか、そして今後の課題は何か----。この10月、JICA職員と専門家らがベトナム・ホーチミンから、カンボジア・プノンペンを経てタイ・バンコクまで、南部経済回廊の約900キロを実際に走行し、回廊沿線で活動する企業や工業団地を訪問。道路整備や貿易円滑化、さらにはビジネス展開の状況など、ASEAN域内の連結性における現状と課題を探りました。

jicaasean_map.jpg

JICAはメコン地域で「南部経済回廊」と「東西経済回廊」への協力を主に行っている。今回走行した南部経済回廊のホーチミン〜バンコク間の距離は日本の東京〜広島間に相当

著しい効果があった物理的連結性

「ベトナム国境と首都プノンペンを結ぶカンボジアの国道1号線では、コンテナを積載したトラックや国際バスが数多く走っており、ベトナムとカンボジアの2国間の物流や交通量が格段に増えていることを目の当たりにしました」

JICAでインフラ整備などを担当する社会基盤部の小泉幸弘次長は、日本がJICAを通じて2000年から整備を支援してきた国道1号線の現状を、実感を込めてそう話します。この国道1号線の整備で、2001年にホーチミンからプノンペンまで12時間ほどかかっていた移動が6時間に短縮されていると言います。

「また、プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線(2013年から日本が整備を支援)は、片側2車線の道路改修がほぼ完成しています(※)。以前は時速30キロで8時間ほどかかっていたプノンペンからバッタンバンまでの区間が、今回、時速90キロ(規定速度)でスムーズに走行可能でした。この国道5号線が移動時間の短縮に与える効果は著しいと感じました」と小泉幸弘次長。

(※)国道5号線:JICAによる協力区間の総延長366kmの約90%が完成していることから、2023年11月22日、カンボジアのフン・マネット首相出席のもと、現地で完工式が実施された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱電、25年度のパワー半導体売上高目標を2600

ビジネス

韓国サムスン電子労組、来週初のスト実施を警告 賃上

ビジネス

消費者態度指数5月は2.1ポイント低下、判断「足踏

ビジネス

IMF、24・25年中国GDP予想を上方修正 堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中