最新記事
極超音速ミサイル

プーチン自慢の極超音速ミサイル「キンジャール」は的に当たらない──英国防省

Putin's 'Undefeatable' Killjoy Super Weapon Missing Intended Targets: UK

2023年12月20日(水)18時20分
ブレンダン・コール

キンジャールの「墓場」──ウクライナ軍が撃ち落としたキンジャールの破片が展示されている(5月12日、キーウ) REUTERS/Valentyn Ogirenko

<8月以来姿を見せなかったキンジャールが発射されたと英国防省が発表した。再デビューで「弱点」は克服できたのか>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「無敵」だと豪語していた名高いミサイルが、ウクライナでは狙った標的に命中していない、とイギリス国防省は発表した。

【動画】ロシアに衝撃を与えたウクライナのパトリオット

プーチンはかねてから、極超音速空対地ミサイル「キンジャール」(NATOのコードネームは「キルジョイ」)の能力について自慢していた。このミサイルは核弾頭搭載可能で、アメリカがウクライナに供与しているM142高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」よりも高速で飛行できるとされている。

イギリス国防省は最新の状況報告書で、ロシア空軍は12月14日、少なくとも1基のキンジャールを発射した可能性が「非常に高い」と述べた。同省はこのミサイルが、軍用飛行場からウクライナ中部に向けて発射されたと述べたが、場所についてはそれ以上明かさなかった。

ロシアがキンジャールを発射するのは、8月以降ではこれが初めてになるとみられる。キンジャールは、プーチンが2018年に大々的に発表した6つの「スーパー新兵器」の1つだ。

イギリス国防省は12月19日、プーチンがその標的を価値が高く、守りが堅固なものに限るとする貴重なキンジャール今回の発射の結果は、「成功と失敗が混じり合ったものになった」と述べた。

「発射されたキンジャールの多くは、狙った標的を外したとみられる。加えてウクライナ側も、この『無敵』のミサイルの迎撃に成功している」と、イギリス国防省は伝えた。

「キンジャールには弱点がある」

イギリス国防省の幹部は、5月の段階で、ウクライナがキンジャールの撃墜に初めて成功したと明かし、さらに、ロシアがウクライナの増強された防空能力を無効化しようとする試みの中で、このミサイルを「さらに数基失った可能性が高い」としていた。

「キンジャールには弱点があるとみられる。これは、ロシアにとって驚きであり、屈辱となっている可能性が高い」。イギリス国防省の状況報告書は、5月の時点でそう指摘していた。

イギリス国防省は1年以上前に、ロシアがキンジャールを、ベラルーシのミンスク州にあるマチュリシチ空軍基地に配備したと発表していた。これは、ウクライナでの戦争にベラルーシ政府が「ますます加担している」という印象を持たせるための策略だと、当時の同省は分析していた。

ウクライナ政府は、ロシアが冬に向けてエネルギーおよび民間の施設を標的とする意図で、ウクライナのインフラに対する攻撃をさらに激化させていると述べる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら

ビジネス

米国株式市場=ナスダック5日連続で最高値更新、アド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 6

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 7

    「これが野生だ...」ワニがサメを捕食...カメラがと…

  • 8

    ウクライナ軍がロシアのSu-25戦闘機を撃墜...ドネツ…

  • 9

    この10年で日本人の生活苦はより深刻化している

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中