最新記事
ロシア

NATO加盟を断念すれば領土はウクライナに返す──ロシアは今そう言ったのか?

Russia May Have Just Given Ukraine Terms for Ending War

2023年9月27日(水)16時37分
ジョン・ジャクソン

ラブロフ(写真)が話した内容はプーチンも了解済みのはずだが(国連総会後の記者会見で。9月23日) REUTERS/Eduardo Munoz

【動画】慣れていない? エジプト大統領に待たされ、プーチンが所在なく部屋をうろつくシーン

<ロシアのラブロフ外相はウクライナが中立国に留まれば、戦争を終わらせる可能性を示唆。だが、曖昧過ぎるその内容に臆測が飛び交っている>

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は23日、重要な条件が満たされれば、ロシアがウクライナとの戦争終結に同意する可能性を示唆した。

ラブロフはニューヨークの国連本部で行われた記者会見で、ウクライナがNATOに参加しないと約束すれば、ロシアは侵攻前のウクライナの国境を承認してもいいと言ったかに見えた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2022年2月24日にウクライナ進攻を開始して以来、戦争を正当化するためにさまざまな理由を挙げてきた。しかし、最も頻繁に語られる理由のひとつは、ウクライナがNATOの一員になり、国境を接する隣国にまでNATOが拡大することに対しての反発だ。

ラブロフは記者団に対し、ロシアは1991年に「ウクライナがソ連邦を離脱する際に採択した独立宣言に基づいて、その主権を承認した」と述べた。

「ウクライナは非同盟の国であり、いかなる軍事同盟にも参加しないということが、われわれにとっての主要なポイントのひとつだった」とラブロフは語った。「そのような条件の下で、われわれはウクライナの領土の保全を支持する」。

国境線を独立当時に

ジョージ・メイソン大学シャール政策政治大学院のマーク・N・カッツ教授は本誌に対し、「ウクライナ最高会議が1990年に採択した国家主権宣言は、確かにウクライナを『軍事ブロックに参加しない永世中立国』と宣言している」と指摘した。

「ラブロフの発言は、ウクライナがNATOへの加盟を断念すれば、独立直前の1990年に設定されていたウクライナの国境をロシアが認める可能性を暗示している」

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの戦争が始まって以来、ウクライナのNATO加盟を推進し、その努力はNATO幹部の支持を得てきた。だが、仮にゼレンスキーが戦争終結のためにNATO加盟を断念することに同意したとしても、クリミア問題で行き詰まる可能性が高い。

プーチンは2014年にクリミア半島に侵攻し、併合したが、ゼレンスキーは半島を自国の一部として取り戻すと宣言している。ソ連崩壊後、クリミア半島はウクライナの領土とされたため、ラブロフはロシアがこの地域を放棄する可能性を示唆したのではないかとの憶測もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

グローバルな経済環境、今後も厳しい状況続く=英中銀

ワールド

モスクワ軍事パレード、戦闘用ドローン公開 ウクライ

ワールド

ロシアで対独戦勝記念式典、プーチン氏は連合国の貢献

ビジネス

三井住友銀行、印イエス銀の株式取得へ協議=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中