最新記事

北朝鮮

実は中露より高リスク、「1つ間違えれば核戦争」...北朝鮮問題の解決へ「意外と取り組みやすい」第一歩とは?

THINK ABOUT A PEACE TREATY

2023年8月24日(木)11時48分
トム・オコナー(米国版シニアライター)
北朝鮮の金正恩総書記

北朝鮮の金正恩総書記(2023年8月) KCNA via REUTERS

<朝鮮戦争が終わっていない状態で「ミサイル乱射」。核戦争が勃発する危険性が無視できない「半島情勢の現実」に取り組む方法>

朝鮮戦争の「休戦」成立から、この夏で70年が経過した。もしも南北の境界線で新たな火が燃え上がれば、今度こそ壊滅的な核戦争になりかねない。

■【画像】合成写真?...装甲車の中から「ひょっこり」顔を出す金正恩

ところが今のアメリカは、ウクライナにおけるロシアの脅威と台湾に対する中国の脅威に気を取られている。だからこそ、と複数のアメリカ政府元高官は言う。朝鮮半島で平和協定不在の状態が続けば、いつあそこで悪夢のシナリオが現実になってもおかしくないと。

例えば退役空軍中将で、かつてインド太平洋軍の副司令官を務めたダン・リーフ。「確かにウクライナで核兵器が使われる可能性はあり、米中間の競争や台湾をめぐる紛争が核戦争に発展する恐れはある。だが、そこまでいくには数々の間違いや誤解、不測の事態が重なる必要がある」と、彼は本誌に語った。

「しかし朝鮮半島では、1つでも判断を間違えたら核戦争になり得る」

軍人として核攻撃の責任を引き受け、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の運用に当たってきたリーフだが、今は立法府が北朝鮮との平和条約締結を優先的に進めるべきだと考えている。それが核戦争の悲劇を回避することにつながり、ひいては人権問題などで北朝鮮から一定の譲歩を引き出せるかもしれないからだ。

「容易ではないが、その可能性はある」と、リーフは言う。「そして緊急性が高いわりに、意外と取り組みやすい。ウクライナに関してロシアと交渉して事態を改善するのは不可能に近いし、中国との戦略的競争に関しても、これならいい方向に進めると確信を持って言える道はない」

しかし北朝鮮に関しては、その道があるとリーフは考える。「平和条約を結ぼうと、言えばいいのだ」

国際紛争が起きればアメリカは軍隊を出して介入する──そういう流れは朝鮮戦争から始まった。しかし、あの戦争でアメリカは正式な宣戦布告をしていない。1950年6月27日に国連軍の一員として、中国やソ連の支援を受ける北朝鮮軍との戦闘に加わっただけのことだ。

それでも当時は、これが第3次世界大戦の始まりだという見方があった。当時の米大統領ハリー・トルーマンは、行き着く先は核戦争だと予言した。この不気味な予言は今も生きている。

3年に及ぶ戦闘で、数万の米兵と数十万の中国兵が命を落とした。そして何百万もの住民が死んだ。その大半は民間人だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を

ビジネス

米4月卸売物価、前月比+0.5%で予想以上に加速 

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中