最新記事

中国

元米駆逐艦長が「心臓が止まるかと」思ったほど危機一髪だった中国艦船の急接近

Former NATO Commander Warns China's Warship Confrontation Could Start War

2023年6月5日(月)18時05分
ファトマ・ハレド

米海軍駆逐艦チャンフーン(右)の進路を横切る中国艦船。「旅洋型駆逐艦」とみられる(6月4日、台湾海峡) Global News via REUTERS.

<海でも空でも中国軍の脅し行為が一段とアグレッシブになっている。このままではいつ戦争にならないとも限らない>

ジェームズ・スタブリディス元NATO欧州連合軍最高司令官は6月3日、台湾海峡で中国の軍艦が米海軍の駆逐艦と衝突寸前まで接近した事件について、このような行為は戦争に発展しかねないと警告した。

カナダのグローバルニュースが公開し、ソーシャルメディアで広く共有された動画には、中国船が米海軍の駆逐艦に接近し、約140メート以内を通過する様子が映し出されている。台湾の独立に対する米中の対立など、多くの問題をめぐって米中間の緊張が高まるなかで起きた非常に危険な事態だ。

アメリカインド太平洋軍(USINDOPACOM)は6月3日、カナダ海軍のフリゲート艦モントリオールとともに台湾海峡を北上し、「航行の自由」作戦を実施していた米海軍のミサイル駆逐艦チャンフーンの近くで、中国艦船が「危険な操縦を行った」ことを発表した。

3日の夕方、スタブリディスは、米中の艦船が接近遭遇した映像を投稿し、中国人民解放軍海軍をツイッターで非難した。

「同じような米軍駆逐艦の艦長を務めたことがある者として、この映像には心臓が止まりそうになった。これは中国海軍の極めてプロ意識に欠ける挑発行為だ。戦争はまさにこのような事件から始まる。人民解放軍海軍よ、恥を知れ」とスタブリディスは書いている。

空でも米軍機を挑発

米軍によると、中国艦船は「チャンフーンの左舷を追い抜き、船首から約140メートルの距離を横切った」が、米駆逐艦は衝突を防ぐために速度を落とさなければならなかった。中国船はその後、「もう一度チャンフーンの船首を右舷から左舷に約1800メートルの距離を横切り、チャンフーンの左舷船首の先で停まった」。

中国軍艦の接近対決は、「国際水域での安全な航行という海上の『ルール』に違反した」と、米インド太平洋軍は3日、ウェブサイト上の声明で述べ、「米軍は国際法で許された場所を、安全かつ責任を持って飛行し、航行し、活動している」と付け加えた。

この事件が起きるほぼ1週間前の5月26日には、中国の戦闘機が米軍偵察機の近くで「不必要に攻撃的な操縦」を行うという事件も起きた。

「中国軍パイロットは米空軍偵察機RC-135の機首の真正面を飛行したため、米軍機は乱気流の中を飛行せざるをえなくなった。RC-135は国際法に従い、南シナ海上空の国際空域で安全かつ日常的な運用を行っていた」と、米インド太平洋軍は5月30日にウェブサイト上の声明で述べた。

さらにこの声明は、「アメリカは、国際法が許す場所において、安全かつ責任を持って、航空機の飛行、艦船の航行、作戦を継続する。そして米インド太平洋軍は、国際法の下、すべての船舶と航空機の安全に配慮して、国際空域での飛行を継続する。我々は、インド太平洋地域のすべての国が、国際法に従って安全に国際空域を使用することを期待している」と続けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米メルク、通期業績予想を上方修正 抗がん剤キイト

ビジネス

赤沢財務副大臣「特にコメントできることない」、日銀

ワールド

中国、有人宇宙船打ち上げ 飛行士3人が半年滞在へ

ビジネス

基調的な物価上昇率、徐々に高まり 見通し期間後半は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中