最新記事

日本再発見

「人生観が変わった」太宰治がアメリカで人気...TikTokで知った若者が『人間失格』に夢中

2023年3月24日(金)19時30分
青葉やまと

文豪をキャラクター化したアニメがきっかけに

ポップカルチャーの動向を報じる米ダートは、一連の太宰ブームが日本のアニメから始まったと指摘している。朝霧カフカ氏による漫画『文豪ストレイドッグス』を原作とする同名のアニメ作品が、ワーナー傘下の国際アニメチャンネル「カートゥーン ネットワーク」によって海外で放送され、英語圏で絶大な支持を得ている。

同作は、若き文豪たちが架空の能力でバトルアクションを繰り広げるという斬新なストーリーだ。日々自殺の試行にいそしみながらも裏社会の組織の幹部を務める太宰治をはじめ、『山月記』の中島敦や『怪人二十面相』の江戸川乱歩など、文豪たちが若きキャラクターとして画面を駆け回り、作風を踏まえた攻撃能力を披露する。

ダートは記事を通じ、太宰はアニメ版のキャラクターとしても、内面に影を抱える男として描かれていると紹介している。人間関係に悩む現代のアメリカの若者の心を掴んだのも偶然ではない、と記事は指摘する。

現代の若者に響いた古典文学

太宰治は昭和を代表する文豪のひとりであり、日本では教科書にも採用されている『走れメロス』などが有名だ。邪智暴虐の王に激怒したメロスが、友人の石工・セリヌンティウスとの約束を果たすため、日没の期限を目指して大地を駆ける。

38歳のときに玉川上水に入水してその生涯を閉じるまでに、太宰は300作近くを著した。著名な作品にはほかにも『人間失格』『斜陽』『女生徒』『津軽』などがあるが、なにぶん大正時代から昭和初期を生きた作家ということもあり、現代の日本で多くを読了したという人は少数派かもしれない。

その太宰作品が現代のアメリカで、少年少女たちの心を掴んでいるという。日本が定評を誇る漫画とアニメがきっかけとなり、現代の若者が強く共感する古典作品の再発見に至ったようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中