最新記事

TikTok

「TikTok」巡る公聴会、ただ蹴散らされるために呼ばれたCEO...向けられた「疑い」と「敵意」

Loving and Hating TikTok

2023年3月28日(火)13時50分
ニティシュ・パーワ
TikTokのチョウCEO

米下院エネルギー・商業委員会の公聴会で証言するTikTokのチョウCEO EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

<CEOが証言した米下院委員会の公聴会は、中国政府への個人データ提供を疑う対中強硬派の言いたい放題の場になったが>

アメリカと中国の間に「新冷戦」が勃発したら、最初の前線の1つは動画共有アプリTikTok(ティックトック)の所有権やデータ保護をめぐる争いになるだろう。

それが浮き彫りになったのは、3月23日に米下院エネルギー・商業委員会で開かれた公聴会。TikTokのチョウ・ショウツーCEOが、同社のデータ保護や安全保障基準について証言した。出席した議員の質問は若者の自殺や、暴力・薬物摂取を助長するコンテンツ、黒人ユーザーの検閲など多岐にわたった。

だが核心は、中国に関係する懸念だった。TikTokは米国内の、特に若いユーザーからどのようなデータを収集しているのか? そのデータは最終的に、TikTokの中国の親会社バイトダンスに渡るのか? それを通じて、中国共産党は米市民をひそかに監視できるのか?

「TikTokは米市民の生活にとって重大な脅威になっている」と、エネルギー・商業委員会のキャシー・マクモリス・ロジャース委員長(共和党)は冒頭に述べた。「米国内でTikTokの利用を許すのは、冷戦中にソ連に土曜朝のアニメ番組の制作権を与えるようなものだと言われる。しかし実際には、それよりもはるかに影響力が大きく、はるかに危険なことだ」

公聴会では厳しい質問が続き、「共産党」「スパイ」「アクセス」といった言葉が飛び交った。ジョン・ジョイス議員はTikTokを「アメリカ人のポケットの中のスパイ」であり、「信用できない企業」だと断じた。

【動画】公聴会後「アメリカの1億5000万ユーザーを守る責任がある」とTikTok上で語るチョウ

中国共産党の影が怖い

委員長のロジャースは、TikTokをめぐる懸念を並べ立てた。データの取り扱い、中国政府とのつながり、米市民への監視疑惑......。だが彼女に言わせれば最大の問題は、「TikTokが、自由や人権、革新といったアメリカ的価値観を尊重するとは思えないこと」。TikTokは「利用を禁止されるべき」だと、ロジャースは主張した。

この主張を委員会のメンバー全員が支持したわけではなかったが、対策を講じる必要があるという点では意見が一致した。TikTokにアメリカからの撤退を求めるほか、特に10代ユーザーのデータ保護について透明性をさらに高めるよう要求することなどだ。TikTokは米ユーザーのデータ保護のために「プロジェクト・テキサス」という計画を打ち出し、既に15億ドルを投じているが、それで十分だという意見は皆無だった。

この公聴会で議員たちが追及したのは、中国共産党がTikTokとその事業に「影響力を持っているかどうか」ではなく、「どれだけ影響力を持っているか」だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、大麻規制緩和案を発表 医療用など使用拡大も

ビジネス

資本への悪影響など考えBBVAの買収提案を拒否=サ

ワールド

原油先物は堅調、需要回復期待で 週間ベースでも上昇

ワールド

ガザで食料尽きる恐れ、ラファ作戦で支援困難に=国連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中