最新記事

育児

話を聞かない親×聴いてほしい子ども、親子の危機をすくう「聴く技術」3つの極意

2023年2月9日(木)18時18分
寺田和代
子どもにお説教する親(イメージ画像)

takasuu-iStock

<子どもとの理想的なコミュニケーションを、漠然とした「気持ち」ではなく、「技術」と「ロジック」で解き明かす>

ある子育て講演会に参加した時のこと。いじめに加担したらしいわが子への接し方について質問した女性に、教育評論家の講師が、「あなた(わが子)には加害者になってほしくない、自分がどんなにあなたを大切に思っているかを繰り返し伝えて」と応え、質問者も他の参加者も大きく頷いていたシーンが忘れられない。いじめた背景や理由は不問に付されたまま断罪され、愛やら正しさやらを一方通行で聞かされる子は立つ瀬がないな、と感じたからだ。

人が生きる上で肝に命じておくべき事柄について子に伝えるのは、親の大切な役割だろう。でも、親や教師から一方的に正論を説かれ、自らの言い分を封じられる子は、自分の感覚や感情まで否定されたように感じないだろうか。また、説教として聞かされる正論がその子の心にどの程度受け入れられ、その後の人生でどこまで功を奏するかもわからない。

そんなモヤモヤした疑問と迷いに決着をつけ、子育てのみならず周囲とのコミュニケーション改善に大きなヒントをもたらしてくれたのが、島村華子著『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』(主婦の友社)だ。

230207bm_scr01.jpg

『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』
 著者:島村華子
 出版社:主婦の友社
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

親が子の声に耳を傾け、気持ちや考えを分かち合う

積極的傾聴の意味を持つアクティブリスニングとは、会話の場面で可能な限り相手の話に注意を向け、たとえそれが聴き手の経験や価値観と違っていても、足しも引きもせず、相手のメッセージ、感情、思考を相手の立場で理解しようとする「聴く技術」のこと。

本著は、その考え方や技術を親子のコミュニケーションに生かすことで子の自己肯定感、自立心、社会的能力や学力、親子(さらに他者と)の信頼関係の基盤を築こうという指南書だ。

著者の島村さんは、現在カナダの大学で教員養成に携わる幼児教育の研究者。子どもの主体性や個性を引き出す教育法として、いずれも世界的定評があるモンテッソーリ教育と、レッジョ・エミリア教育の専門家でもある。

「子どもの声を聴くことこそが教育の基本」(レッジョ・エミリア教育)との考え方に貫かれたこの本が伝えるのは、子育ての要諦は親が子の声に耳を傾け、対話することにあるということ。そして、ここがポイントなのだけど、対話とは「意見の押し付けや説得ではなく、互いの気持ちや考えを尊重しあい、分かち合うこと」。

現実を見れば、子どもが親や大人に対し、自分の意見や気持ちを率直に吐露すると、生意気だとか口答えするのか、と拒絶されたり、そんな考えじゃだめだとただちにジャッジされ、否定されるケースがあまりに多いのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送シリアに「トランプタワー」?、米大統領との会談

ワールド

難民認定の南ア白人59人が米到着、移民規制の中の優

ワールド

米共和党、予算法案に地方税やチップ課税の新たな控除

ビジネス

日経平均は大幅続伸で寄り付く、米中合意を好感 3万
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中