最新記事

事故

「MRI検査室に拳銃を持ち込んではいけません!」注意を無視して、磁場による誤射で死亡

2023年2月27日(月)18時01分
松岡由希子

MRI装置の磁場によって拳銃が発砲された...... (写真はイメージ) Zlikovec-shutterstock

<銃保有支持派として知られるブラジル男性が、MRI検査室に拳銃を持ち込んだところ......>

ブラジル・サンパウロの医療施設「ラボラトリオ・クラ」で2023年1月、MRI装置による誤射事故が発生し、40歳のブラジル人男性弁護士レアンドロ・マティアス・デ=ノヴァエス氏が死亡した。

デ=ノヴァエス氏は母親に付き添ってMRI室に入る際、「金属製の物はすべて室外に置いておくように」と指示されたにもかかわらず、これを無視して拳銃を持ち込んだ。MRI装置の磁場によってこの拳銃が発砲され、デ=ノヴァエス氏の腹部に当たったという。デ=ノヴァエス氏は2週間以上にわたって病院で治療を受けたが、2月初旬に死亡した。

デ=ノヴァエス氏は銃保有支持派として知られ、インスタグラムやティックトックでたびたび銃保有を支持するコンテンツを投稿していた。警察によると、デ=ノヴァエス氏が携帯していた拳銃は、適切に登録されていたものだった。

>>■■【動画】これは危険! MRI装置の磁場の危なさを実験

「金属製のものは一切持ち込まないように警告されていた」

「ラボラトリオ・クラ」の広報担当者は英紙テレグラフの取材で「当医療施設では事故防止のためのプロトコルがすべて遵守されていた」と強調し、「患者とその同伴者はMRI室への入室方法について適切に指導を受け、金属製のものは一切持ち込まないように警告されていた」と主張している。

MRI(核磁気共鳴画像法)は1.5~3.0テスラの磁場を用い、水分子の陽子をほぼ同方向へ向かわせることで人体を撮像する仕組みだ。この磁場は、大きな強磁性体(強い磁場で比較的一様に反応する材料でできたもの)を引っ張るには十分な強さがある。

MRI装置による誤射事故はこれまでもNYで発生

MRI装置による誤射事故はこれまでも発生している。2002年5月の米レントゲン線学会(ARRS)の機関誌では、米ニューヨーク州西部の外来画像センターでMRI検査を受けにきた非番の警察官がMRI室に拳銃を持ち込み、MRI装置による誤射事故が発生したことが報告された。

警察官がMRI装置から3フィート(約90センチ)離れた棚の上に拳銃を置こうとしたところ、拳銃が警察官の手から離れてMRI装置の穴に吸い込まれ、壁に発射したという。幸い、この事故での負傷者はいなかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

オーストリア中銀総裁、金利見通しに慎重姿勢 利下げ

ワールド

英首相、第2次世界大戦の式典退席を謝罪 選挙戦に痛

ワールド

北朝鮮がごみ風船再開、韓国は拡声器放送で対抗へ

ワールド

仏戦闘機、ウクライナに年内供与 パイロット訓練へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 2

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっかり」でウクライナのドローン突撃を許し大爆発する映像

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    ガスマスクを股間にくくり付けた悪役...常軌を逸した…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 7

    ロシア軍が「警戒を弱める」タイミングを狙い撃ち...…

  • 8

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 9

    英カミラ王妃が、フランス大統領夫人の「手を振りほ…

  • 10

    【独自】YOSHIKIが語る、世界に挑戦できる人材の本質…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 6

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中