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米安全保障

「中国スパイ気球」の残骸に「貴重な情報が期待できる」──元CIA職員

Former CIA Officer Explains How Chinese Spy Balloon May Benefit U.S.

2023年2月6日(月)15時24分
トーマス・キカ

太平洋上で破壊された「偵察」気球(2月3日) Randall Hill-REUTERS

<米軍はアメリカ領空に侵入した中国の「偵察用」気球を海上で撃ち落とし、残骸を回収中。搭載された機器やデータを分析すれば、中国の意図と能力を知ることができそうだ>

撃墜した中国のスパイ気球から回収される情報について、ニュース番組に出演した元CIA職員は「かなり期待している」と語っている。

奇妙な白いバルーンがモンタナ州ビリングス上空で初めて目撃されたのは2月1日のこと。中国は気象観測気球だと主張したが、最終的に偵察用の装置であることが判明した。米軍は4日午後、サウスカロライナ州マートルビーチの海岸からおよそ6海里(約11キロ)の大西洋上で気球を撃墜した。

【動画】米SNSを沸かせたスパイ気球撃墜の瞬間

同日、AP通信が報じたところによると、中国外交部は抗議の声明を出し、「関連企業の正当な権利と利益を断固として守り、同時にさらなる行動を起こす権利を留保する」と述べた。

ジョー・バイデン大統領は撃墜の直後、気球に対する政府の無策を批判する声に反論した。バイデンは2月1日の時点で気球の破壊を命じたが、軍当局は、撃墜後の破片が地上にいる人々に被害が出ないように、気球が海上に出るまで待つべきだと主張したという。破壊後、政府はこの気球について調べるため、破片を回収する作業を開始した。

核兵器関係の情報収集か

元FBI特別捜査官で元CIA職員のトレイシー・ワルダーは5日、ニュース専門放送局MSNBCのケイティ・ファンの番組でインタビューに答え、気球が破壊された状況から考えて、収集した破片から貴重な情報を得られるのではないか、と語った。

「気球が撃墜された海域は水深わずか14メートルだったようで、それはすごくいいことだ。海上なら墜落の衝撃もいくらか緩和され、機器の損傷もそれほど大きくないかもしれない。そうであれば、私たちはリバースエンジニアリングで中国の能力を正確に調べることができる」と、ウォルダーは語った。

「この気球は中国に情報を提供するかわりに、私たちに多くの情報を提供してくれることになる。可能性が高いと思うのは、この気球は単に上空から写真を撮影していたのではなく、測定情報、つまり核兵器やレーダー、ソナーなどからの信号を収集していたのではないかということだ。この気球がどんな装置を搭載しているかを調べることで、こちらにとって非常に貴重な情報を収集できると期待している」

ウォルダーの仮設を根拠は、気球が最初に目撃されたモンタナ州には、全米でも数少ない核ミサイルが配備されているマルムストローム空軍基地があり、周辺にはミサイル約150基を収容する格納庫もあるという事実だ。核が配備されている基地は、モンタナ州には他に3カ所、西部ワイオミング州と中西部のノースダコタ州にもある。

5日午後、本誌がコメントを求めたところ、ホワイトハウスは気球の破片回収作業の状況について、最新情報を持ち合わせていないと回答があった。

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