最新記事

ロシア

ハイマースでDNAレベルに粉砕されたロシア兵

Obliterated Russian Troops From HIMARS Strike Can Only Be Identified by DNA

2023年1月4日(水)18時34分
ブレンダン・コール

マケエフカの攻撃の翌日、モスクワで犠牲者を追悼する人々(1月3日)Albert Dzen-REUTERS

<弾薬庫のそばの一つの建物に多数の兵士を集めたロシア司令官の愚かさ加減にロシア国内で怒りが広がっている>

報道によれば、ウクライナ軍の攻撃で死亡したロシア兵たちの遺体の身元を特定するため、法医学的な調査が行われている。

12月31日、ウクライナ東部ドネツク州マケエフカの専門学校に置かれていたロシア軍の兵舎、ウクライナ軍の高性能ロケット弾4発が命中。63人のロシア兵が死亡した。

ロシア国防省の発表によればこれは、米国製の多連装ロケットシステム「HIMARS(ハイマース:高機動ロケット砲システム)」から発射された6発のロケット弾のうちの4発だ。残りの2発は、ロシア軍の防空システムによって撃墜されたという。

「死亡した兵士の親族と友人には、必要なすべての援助とサポートを提供する」と同省の声明は続いている。

ロシア当局がウクライナでの戦争の損失を公式に認めるのは稀だが、声明は、ロシアの軍事ブロガーたちが投稿した攻撃の詳細に続いて発表された。

イギリスに本拠を置く公開資料にもとづく調査報道機関「ベリングキャット」の首席ロシア調査員クリスト・グロゼフは、ロシア軍のテレグラム・チャンネルが「現場の遺体の身元は、DNA鑑定でなければ特定できないと報じた」とツイートした。

ロシア国内に広がる怒り

ニューズウィークは、ロシア国防省にコメントを求めている。

グロゼフはそれに続くツイートのなかで、今回の被害者数は、仮に少なく発表されているとしても、「1回の攻撃の損失としては、ロシアが認めた最大のもの」だろうと述べている。

2022年4月にロシア黒海艦隊のサイル巡洋艦「モスクワ」を撃沈した攻撃では、死者数が最大700人にのぼったとする推計もあるが、ロシアがこれまで公式に認めている死者数はわずか20人足らずだ。

マケエフカの犠牲は、ロシア国内の怒りに火をつけた。報道によると、死者の大部分はウラジーミル・プーチン大統領が言うところの「部分的な」動員で徴兵された人たちだ。ロシア・サマラ州のドミトリー・アザロフ知事は、死者のなかには、同州住民が不特定多数含まれていると述べている。

ロシア政府寄りの軍事ブロガーによれば、今回の攻撃では、兵舎近くに保管されていた弾薬が爆発したことで、被害が拡大したという。

ウクライナ東部の親ロシア派部隊の元司令官で、現在はロシア民族主義軍事ブロガーとして有名なイーゴリ・ギルキンがテレグラム上で述べたところによれば、瓦礫の下に多くの人が埋まっており、死傷者数は「数百人」にのぼる可能性があるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措

ビジネス

アリババ、1─3月期は売上高が予想上回る 利益は大

ビジネス

米USTR、対中関税引き上げ勧告 「不公正」慣行に

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中