最新記事

台湾有事

台湾防衛の代償──米死傷者1万人、中国1.5万人、日本も多大な犠牲 CSISが24通りのウォーゲームの結果を発表

China Would Lose War With U.S., Simulations Predict

2023年1月12日(木)18時58分
ジョン・フェン

台湾軍の水陸両用強襲車(2022年7月、中国の攻撃を想定した恒例の漢光演習で) Ann Wang-REUTERS

中国の台湾侵攻は失敗する可能性が高いが、アメリカ及び日本を含むアメリカの同盟国にとって、それは「高い代償を伴う勝利」となるだろう──ワシントンに本拠を置くシンクタンクが24の机上演習用ウォーゲームでシミュレーションを行い、そんな予測を発表した。

中国は多数の兵員を台湾に送り込むが、ほとんどの場合作戦目標を達成できず、開戦から2週間経っても台北を陥落できない。米有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月9日に発表した報告書はそう結論付けている。ただし、防衛側も多大な犠牲を覚悟しなければならない。

中国は台湾も自国の一部だと主張しているが、台湾は長年「民主的な独立国家」であるとの立場を貫いてきた。中台を隔てるのは幅130〜180キロ程の台湾海峡だ。中国が台湾問題に「最も危険な解決策」でケリをつけようとするなら、この海峡を血の色に染める激戦が展開されることになると、報告書は警告している。

中国が台湾の武力併合に踏み切るとすれば、2026年以降になる可能性が高いと、米高官はみている。政治的思惑はさておき、その頃には本格的な水陸両用作戦を実施できる準備が整うからだ。CSISのシミュレーションでも、2026年の侵攻開始が想定されている。

台湾海軍と空軍はほぼ全滅

「始まりはどのゲームも同じだ。中国軍の侵攻開始後、最初の何時間かの爆撃で、台湾の海軍と空軍はほぼ全滅する」と、報告書は述べている。「中国海軍は、中国の強力なロケット軍のミサイル攻撃に支援されて、台湾全島を包囲し、敵の航空機と艦船が台湾に近づけないようにする」

「中国軍の大部隊が軍用の水陸両用船と(貨物を積んだトラックを輸送できる)民生用のRORO船で海峡を渡り、台湾に上陸。同時にヘリコプターと軍用機で多数の中国兵が台湾に降り立つ」

数の上では中国軍は台湾軍より圧倒的に有利なようだが、海峡を渡る中国船の輸送キャパシティには限りがあり、航行中にミサイル攻撃にあうリスクもある。そのため、どのゲームでも中国軍の上陸部隊は台湾に侵入できても、兵站のカナメとなる港湾と飛行場を押さえられず、物資の補給に支障をきたして攻撃の続行が困難になるとの結果が出ている。

侵攻初日に台湾に上陸する中国兵は約8000人。3日半後でも1万6000人と見積もられている。参考までに、第2次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦で連合軍が北フランスの海岸に送り込んだ兵員は9万人だ。

「ノルマンディー上陸作戦に比べ、中国軍の上陸部隊ははるかに小規模で、台湾に侵攻できたところで、最終的な作戦成功は保証されない」と、報告書の共著者であるマーク・キャンシアン、マシュー・キャンシアン、エリック・ヘギンボサムは述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF、24・25年中国GDP予想を上方修正 堅調

ワールド

タイ当局、タクシン元首相を不敬罪で起訴へ 王室侮辱

ビジネス

国債先物は続落、長期金利約12年半ぶり高水準1.0

ビジネス

中国国有銀が人民元を下支え、スワップ取引活用=関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中