最新記事

米政治

トランプはついに党のお荷物......そして「バイデン外交2.0」始動はいかに?

BIDEN’S FREER HAND

2022年11月18日(金)13時50分
マイケル・ハーシュ
バイデン大統領

こと外交に関してはバイデンも笑顔でいられそうだ(写真は今年6月にドイツで開かれたG7首脳会議) JOHN MACDOUGALLーPOOLーREUTERS

<アメリカ社会に憎悪をかき立て続けたが、ふたを開ければ不発に終わったトランプ旋風。アメリカの対ウクライナ・対中国外交は、選挙後にこう変わっていく>

狂ったように激しく振れていたアメリカ政治の針が、ようやく正常に戻る兆しが見えた。そんな感じがする。

もちろん、今回の中間選挙の結果はまだ確定していない。だがドナルド・トランプ前大統領とその仲間たちが大きな痛手を喫したのは確かだ。

それでもトランプ自身は、次の大統領選挙に共和党から出馬するつもりでいる。そうであれば今後2年間、共和党が深刻な身内の争いに振り回されるのは必至だ。

その場合、現職のジョー・バイデン大統領は選挙前の予想に反して、少なくとも外交に関しては、自分の政策を遂行しやすくなるだろう。

なぜか。仮に共和党のケビン・マッカーシーが下院議長になったとしても、決して一枚岩ではない党内の調整にてこずるからだ。

一番厄介なのは、トランプの唱えるMAGA(アメリカを再び偉大に)の主張に共鳴する極右の一派だ。共和党は最終的に下院で過半数を制するだろうが、民主党との議席数の差はわずか。内政面の課題で結果を出すためには、何としても党内の結束を維持しなければならない。

それだけではない。今回の選挙では外交政策、とりわけウクライナへの軍事支援に関して、共和党の主張が一貫性を欠くことも明らかになった。

ジョージ・ワシントン大学政治経営大学院のトッド・ベルト教授に言わせれば、「共和党には外交に関して一致した見解がない。ウクライナ支援についても、党内では賛成派と反対派が拮抗している」。

選挙前のマッカーシーは、ウクライナ支援についてもバイデン政権に「白紙委任」はできないと語っていた。だが共和党内でも、現状では支援の継続・拡大を(議会による監視の強化という条件付きで)支持する議員が多数派を占めている。

一方で、多数派に転じた下院共和党がヨーロッパの同盟諸国に批判の矛先を向ける可能性はある。アメリカの負担している金額に比べて、ヨーロッパ諸国の拠出額は格段に少ないからだ。

それ以外の外交課題(例えば中国やイラン、サウジアラビアとの関係など)については、バイデン政権は従来から強硬路線を取っており、共和党との相性はいい。この点は今後も変わらないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア、イスラエルのラファ攻撃「阻止する必要」 国際

ビジネス

マイクロソフト、中国の一部従業員に国外転勤を提示

ビジネス

先進国は今のところ賃金と物価の連鎖的上昇回避、バー

ワールド

北朝鮮の金与正氏、ロシアとの武器取引否定 「ばかげ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中