最新記事

漫画

韓国当局、大統領批判の漫画「きかんしゃユン・ソクヨル号」に激怒 展示した国際漫画祭の支援取消へ

2022年10月6日(木)21時41分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「トーマス」のパロディーだけではなかった!

この漫画、ユン大統領を「きかんしゃトーマス」にしたことが問題視されたわけだが、それ以上に議論を呼ぶ「仕掛け」があった。

よく見ると"ドヤ顔"の「きかんしゃユン・ソクヨル号」の窓からボブヘアーの女性が顔をのぞかせている。これはユン大統領の夫人、キム・ゴンヒだ。さらに「ユン・ソクヨル号」に牽引された列車には手に剣を持ち法衣を着たこわもての男たち。これはユン大統領がかつていた検察庁の検事たち。そう、つまりこの漫画は「ユン大統領を夫人が運転し、かつて同僚だった検察を従えて、国民を蹴散らしている」ことを描いているのだ。

そうした漫画が文化体育観光部(日本の文科省に相当)が助成金を出す国際漫画祭で金賞を受賞したとあって、韓国政府、とりわけ文化体育観光部が激怒した。

文化体育観光部は、4日報道資料を通じて「富川市所属の財団法人である韓国漫画映像振興院が中・高校生を対象に主催した全国学生漫画公募展で政治的なテーマを露骨に扱った作品を選定して展示したのは、学生の漫画創作欲求を鼓吹しようとする行事の趣旨に極めて反する」と発表。

また「全国学生漫画公募展を主催した韓国漫画映像振興院は富川市所属の財団法人だが、国民の税金である政府予算102億ウォンが助成金として支出されており、この公募展の大賞には文化体育観光部長官賞が授与されている」と指摘した。

さらに追加資料でこの公募展が文化体育観光部の後援名称の使用承認事項を違反したと明らかにした。

韓国漫画映像振興院が文化体育観光部に公募展の後援を申請した際、提出した書類には「作品の応募者がはっきりしていなかったり盗作・盗用・著作権侵害の可能性がある場合」「政治的意図や他人の名誉を毀損した作品」「応募要綱基準(規格、分量)を満たしていない場合」「過度な扇情性、暴力性を帯びた場合」を欠格理由と定めていた。

文化体育観光部は「実際の公募要綱には、このような欠格事項が記載されず、審査委員にも公示されていないことを確認した。また、未発表の純粋な創作作品かどうかについて深く検討されなかったという点も確認した。従って韓国漫画映像振興院は当初の承認事項に決定的に違反して公募を進めていたものと判断される」と説明。

そして「文化体育観光部の名称使用の承認に関する規定第9条第1項「承認した事項に違反して後援の名称を使用」に該当し、規定に応じて迅速に関連措置を履行する計画だ」と発表し、韓国漫画映像振興院が今後富川国際漫画祭や関連公募展などで「文化体育観光部後援」という名称を使用しないように制裁措置を取るものとみられる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時間後

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中