最新記事

教育

学生の「教員離れ」はロスジェネ採用で解決できる

2022年9月28日(水)10時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
小学校の教室

全国の自治体で教員採用試験の競争率が低下している Drazen Zigic/iStock.

<ロスジェネ世代が新卒だった当時の競争率は現在より格段に高く、優秀でも教師になれなかった人が大勢いる>

教員採用試験の競争率の低下が止まらない。教員の過重労働が知れ渡ってか、学生の教員離れが進んでいることが数字で表れている。これではいけないと、試験を春・秋と年に2回実施する自治体も出てきた。夏に受験できなかった人、ないしは他の自治体で不合格になった人を受け入れる狙いだ。

2022年度の公立小学校教員採用試験(2021年夏実施)の受験者は4万636人、採用者は1万6152人。競争率は前者を後者で割って2.52倍、2~3人に1人が採用される状況だ。後述するが、筆者が新卒だった頃と比べて競争率はだいぶ下がっている。

なお、自治体による違いもある。<表1>は、2022年度の小学校教員採用試験の競争率を都道府県別に計算し、数値が高い順に並べたものだ。政令指定都市は、所在する県の分に含めている(たとえば横浜市の受験者・採用者は、神奈川県に含めている)。

data220928-chart01.png

全国値は2.52倍だが、県による違いがある。5倍越えの県は2県で、最も高いのは高知県の9.24倍となっている(受験者1026人,採用者111人)。

その一方で17の県で2倍を切っており、最低の秋田では1.35倍となっている(受験者206人、採用者153人)。これは半分以上が採用される状況で、受験者にすれば有難いが、採用側の心中は穏やかではない。新規採用者の質の担保が難しいと頭を抱えていることだろう。採用試験の年2回実施に踏み切っているのは、こういう自治体だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

トヨタ、米テキサス工場に5億ドル超の投資を検討

ワールド

米国務長官「適切な措置講じる」、イスラエル首相らの

ビジネス

日産、米でEV生産計画を一時停止 ラインナップは拡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中