最新記事

俳優

中国側に「寝返った」ジャッキー・チェン、「父親がスパイだった」過去が背景に

2022年6月9日(木)18時51分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)
ジャッキー・チェン

2017年の第89回アカデミー賞でのジャッキー・チェン Mario Anzuoni-REUTERS

<香港のヒーローだったジャッキー・チェンが、ある時から「中国による支配」を礼賛し始め、現地で毛嫌いされるように。その裏にあった「家族の物語」とは>

世界で最も有名なアジア人の一人といえば、香港出身のアクションスターであるジャッキー・チェンだろう。

2012年に映画でのアクション映画から引退すると言っていたアクション映画から引退すると言っていたジャッキーだが、2022年末に公開される予定の次回作でもアクションが入っているという。現時点でその映画「Ride On」はまず中国市場で公開されることになっている。

そんなジャッキーが世界で大きく飛躍を始めたのは、1996年。3度目の正直となるハリウッド進出で、映画『レッド・ブロンクス』をひっさげて全米興行収入1位の快挙を成し遂げた。

当時アメリカに住んでいた筆者は、なんと言っても、アメリカの音楽専門テレビ局MTVで、ジャッキーが1995年の「特別功労賞」を授与されたのをよく覚えている。その授与式でアメリカの映画監督クエンティン・タランティーノがまだ一般にはあまり知られていなかったジャッキーを興奮気味に全米に紹介、「ジャッキー・チェンの映画を見たら、とにかくジャッキー・チェンになりたくなる」と語った。それが『レッド・ブロンクス』の成功にもつながったと言えよう。

「中国人は誰かに支配されたほうがいい」

香港を拠点にこれまで200作品以上の映画を世に送りだしたジャッキーだが、近年は評判が芳しくない。そのきっかけを作ったとされるのが、2009年にジャッキーが、中国の海南島で開催されたビジネス関連のイベントで述べた次のコメントだった。

「今、私は混乱している。あまり自由になりすぎると、今の香港のようになってしまう。混沌としているのです。台湾だって混沌としている......われわれ中国人は規制をされたり、誰かに支配されたほうがいいのではないかと徐々に考えるようになっている。コントロールされないと何でもやりたいことをやってしまうから」

この辺りから、ジャッキーと中国本土との関係がクローズアップされるようになった。2011年には米ホワイトハウスで国内の人権問題で批判されていた胡錦濤国家主席と共にディナーに参加している。また、中国本土や中国共産党を持ち上げるような発言もよく聞かれるようになり、香港や台湾の多くの人たちから白い目で見られるようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中