最新記事

銃乱射

相次ぐ銃乱射で共和党に改心の兆し?

Is Republican Resistance to Gun Control Finally Breaking?

2022年6月1日(水)13時08分
イワン・パーマー

「もううんざりだ」ロブ小の銃乱射事件を知って怒り出したNBAウォリアーズのスティーブン・カー監督 Courtesy of Golden State Warriors/REUTERS

<銃乱射事件が起こるたび銃規制や身元調査の強化法案が提出されては共和党に葬られてきた。そこにわずかながら、AR-15型ライフル銃の禁止を支持するなど変化の兆しがみえる銃反対派が言う>

テキサス州ユバルディのロブ小学校で5月24日、児童19人と大人2人が亡くなる銃乱射事件が発生し、さすがの共和党も一部だが銃規制を支持する動きが出始めている。

共和党の下院議員クリス・ジェイコブスとアダム・キンジンガーは、銃乱射に使われたAR-15型半自動ライフル銃を禁止することに支持を表明した。大容量弾倉の販売も禁止し、他の銃器の購入についても法的要件を厳格化するべきだとしている。

スーザン・コリンズ、パット・トゥーミーをはじめとする他の共和党議員も、ロブ小学校の銃乱射事件を機に、銃購入者の身元調査の拡大が必要だとの持論を改めて展開している。

上院少数党院内総務のミッチ・マコーネルも、テキサス州選出の上院議員、ジョン・コーニンに対し、銃規制法案について、民主党との妥協点を探る交渉を率いるよう依頼した。

実効ある対策は進んでいない

アメリカでは銃乱射による無差別大量殺人が繰り返し起きているにもかかわらず、銃を規制する試みは共和党の上院議員の反対で通らなかった。

だが民主党のクリス・マーフィー上院議員によると、ロブ小の惨劇を受けて、銃規制に超党派の支持が得られる可能性が出てきたと、楽観的な見方を示した。

「現在は、超党派でより実のある交渉ができている。サンディフックの事件後と比べても、今は話し合いに応じる共和党議員が相当増えているのは確かだ」とマーフィーは5月29日、出演した米ABCの政治討論番組「ジス・ウィーク」で発言した。

「我々はレッドフラッグ法(危険と判断される人物から一時的に銃を没収する法律)についても話している。また、身元調査制度の強化と拡大も議題の1つだ。銃の安全な保管についても協議している。さらに、メンタルヘルス関係のリソースの問題や、学校警備費の増額についても話し合っている」とマーフィーは付け加えた。

だが、ネットメディア「アクシオス」のエリン・ドハティーが指摘しているように、銃乱射事件を受けた銃規制の試みは、これまでいつも挫折してきた。

2012年に児童20人と大人6人が射殺されたサンディフック小学校襲撃事件のときも、2018年にフロリダ州パークランドで起きた銃乱射事件のときも、あるいは2017年にラスベガスでコンサートの会場が銃撃を受けて60人が死亡したときも、銃規制強化や身元調査拡大の法案は共和党の支持がなくて成立しなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中