最新記事

日本社会

沖縄、本度復帰50年 対中国の最前線として進む「要塞化」

2022年5月14日(土)11時06分
宮古島で演習を行う自衛隊員

宮古島で演習を行う自衛隊員。REUTERS/Issei Kato

仲里成繁(せいはん)さんが営むメロン畑のすぐ横にはフェンスがそびえ、その向こうにミサイル発射装置を備えた車両が並ぶ。2019年3月に陸上自衛隊の駐屯地が配備されて以降、沖縄県宮古島の中央部に広がる静かな農業地帯には、訓練に励む隊員の声が響くようになった。

もし中国と戦争になれば軍事施設は標的になりかねず、仲里さんは国が住民の意志を侵害しているとして今も声を上げて基地に反対している。しかし、島民の中では少数派だと仲里さんは感じている。

「宮古島という小さな生活圏の中で色々なつながりがある」。68歳の仲里さんはビニールハウスの横でそう語った。「子どもや親せきが自衛隊の隊員ということもあり、つながりが狭い。本音では反対と思っていても、声にはなかなか出せないところが難しい」

1972年まで米国の統治下にあった沖縄は、15日に日本本土復帰50年を迎える。第2次世界大戦の激戦地で暮らす人たちは、40年以上農業に携わる仲里さんをはじめ、平和を願い続けてきた。しかし、この半世紀で経済成長を遂げた中国が軍事的にも台頭し、台湾に近い南西諸島は再び戦火に巻き込まれるリスクに直面している。

玉城デニー知事は5月初めに東京の外国特派員協会で会見し、「台湾有事は日本有事と言うような内容の国会議員の発言など、沖縄が武力衝突に巻き込まれることを前提とした議論が行われていることを強く懸念している」と語った。

米国の統治が終わったときに17歳だった琉球大学の我部政明名誉教授は、沖縄がこの先どうなるのか、不安を感じたことを覚えている。それから50年、今も不安を感じているという。「日本と中国の間で戦争や紛争が起こった場合、沖縄は最前線になる」と話す。

戦略的な重要性

サンゴ礁に囲まれ、サトウキビ畑が広がる宮古島は2つの大型空港を有し、軍事的に重要な拠点と考えられている。台湾から400キロ、中国本土の沿岸部から約600キロ。日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)からは200キロしか離れていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中