最新記事

アメリカ

現在アメリカで大麻合法は18州+特別区、違法州にも広がる「大麻成分入り」キャンディ&グミの危険性

2022年5月19日(木)16時40分
長野弘子(在シアトル)

アメリカ中毒相談センター協会(AAPCC)の調査によると、12歳未満の子供が家庭で大麻成分入りのキャンディやグミを誤って食べたケースは、2016年の132件から、2020年には2500件に急増した。

大麻の販売は専門店のディスペンサリーで行われ、通常の小売店では販売できないことになっているにもかかわらず、なぜこのようなことが起きているのだろうか。

その謎を解くには、大麻の有効成分について知る必要がある。

大麻の有効成分はカンナビノイドと呼ばれるが、その中でもテトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)という2つの成分が特に市場で出回っている。ドラッグとして「ハイ」になる精神活性成分はTHCであり、CBDでは酩酊状態にはならない。

THCにもさまざまな種類があるが、いわゆる法律で規制されているTHCは大麻そのものから抽出される「デルタ9」であり、もうひとつの大麻の有効成分であるCBDから合成される「デルタ8」と呼ばれるTHCに関しては、明確な法規制のない州が多い。

問題は、デルタ8もまた、デルタ9と類似した精神活性作用がある点だ。したがって、法律でデルタ8を明確に禁止していない州では、法の抜け穴が悪用され、コンビニでデルタ8入りのグミやキャンディが堂々と販売されている場合がある。

現在、デルタ8の販売を禁止もしくは規制している州は、ニューヨーク州、コロラド州、ワシントン州、アラスカ州、アリゾナ州などを含む18州のみである。

デルタ8が普及したきっかけは、2018年に遡る。この年、米国で新たな農業法「2018年農業法」が成立し、産業用大麻と呼ばれる「ヘンプ」の栽培・抽出が全米で合法化された。

ヘンプは「デルタ9 THCの濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下のもの」、マリフアナは「デルタ9 THCの濃度が0.3%を超えるもの」と定義されており、ヘンプとマリフアナは法的に明確に区別されている。

全米で合法的に栽培が可能になった「ヘンプ」からCBDを抽出し、そこからデルタ8を大量に合成すれば、法律でデルタ9を禁止している州――つまり、嗜好用大麻が合法でない州――でも、日本で言う脱法ハーブのような形で販売できるというわけだ。

観光客で一年中にぎわうフロリダ州でも、このデルタ8入りキャンディが大きな問題となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中