最新記事

東南アジア

ミャンマー、軍政主導で水かけ祭り復活も国民はボイコット 国内各地で戦闘続く

2022年4月15日(金)20時20分
大塚智彦
水をかけるミャンマーの少年少女

お祭りを子供も女性も楽しんだあの頃はまた戻ってくるのか Soe Zeya Tun / REUTERS

<パンデミック以後、中止されたお祭りが復活したものの、今も各地で戦闘は続き......>

ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は4月13日、中心都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーなどで国民的行事である「水かけ祭り(ティンジャン)」の式典を開催して、歌手やダンサーによる歌や踊りのイベント後、軍政支持者らと共に放水をして旧正月を大々的に祝った。

しかし軍政に反対する民主派勢力や軍政の弾圧を恐れる市民らは「官製水かけ祭り」に反対を表明して参加を拒否した。市民が総出で路地や通りでお互いに水をかけ合う賑やかなお祭りは各都市から姿を消した。

4月13日は太陰暦に基づくミャンマー暦の正月にあたり、1年間の罪穢れや厄を水で流れ落とすとの意味が込められているという。

同じような水かけ祭りはタイやベトナムでも行われている。特にタイでは「ソンクラン」として知られ、例年外国人観光客も参加して大々的に行われ世界的にもニュースとなるが、タイはコロナ感染拡大防止策の一環として今年のソンクランを中止している。

今回ミャンマーでは中部の都市マンダレーなど複数の地方都市で「水かけ祭り反対」や「反軍政、民主政権復活」などを唱える学生らのデモがあったというが、軍の弾圧を恐れ小規模、短時間のデモだったという。

ヤンゴン市内の官製水かけ祭りの会場となった中心部のスーレーパゴダ周辺には軍が部隊を配置して厳重警戒態勢をとったため、特に混乱はなかった。

同様にヤンゴン市内の一部地域では子供たち数人が通行人に水をかける様子が見られたというが小規模で短時間だったという。

地方で続く軍と民主派の戦闘

こうしたなか、ミャンマー国内では国軍と民主派の武装市民抵抗組織「国民防衛隊(PDF)などとの戦闘が相変わらず続いている。

水かけ祭りの当日である4月13日にはタイとミャンマーを結ぶアジア・ハイウェイで国軍と東部カヤ州の「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」が激しい戦闘状態になっていると反軍政を掲げる独立系地元メディアは伝えている。

同じく13日午前9時半ごろ、ヤンゴン地方域バハン郡区にあるボ・セイン・マン競技場近くでは兵士に爆弾を設置した疑いをもたれた若者3人が発砲を受け、1人が死亡、2人が逮捕される事案も起きている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-ポーランドのトゥスク首相脅迫か、Xに投稿 当

ビジネス

午前の日経平均は反落、前日の反動や米株安で

ビジネス

中国新築住宅価格、4月は前月比-0.6% 9年超ぶ

ワールド

北朝鮮技術者が身元偽り米企業でリモート勤務、支援の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中