最新記事

通信網

キーウ近郊、スターリンク衛星とのハイブリッド技術で携帯電話が復帰

2022年4月12日(火)17時40分
青葉やまと

ベラルーシ国境に近いリューベチでは、町全体が地雷原と化すなか、地元の通信技術者らがスターリンクのアンテナを各所の屋根に設置し、通信環境の回復を進めた。 twitter-@Mykhailo Fedorov

<携帯電話が不通となっていたウクライナ首都近郊の複数の町が、衛星と携帯ネットワークのハイブリッド技術によりオンラインに復帰した>

ウクライナのインフラが壊滅的なダメージを受けるなか、キーウ近郊の2つの町で携帯通信網が復旧した。イーロン・マスク氏率いる米スペースX社の衛星通信網「スターリンク」が、物理的なケーブルが破断した町を遠隔地の通信拠点と結んだ。ウクライナ・インターファクス通信および、通信業界の調査企業である米ライト・リーディング社が報じた。

4月1日にはキーウ西側のイルピンの町、および北西部のロマニフカの町で復旧が成功している。さらに7日には、キーウ西の2つの村でも稼働が始まった。これにより、住民は通常利用しているスマートフォンなどの携帯電話を再び利用できるようになった。

復旧はウクライナ・ボーダフォン社が、スペースXの協力を受けて進めている。スターリンク衛星からの電波を小型アンテナで拾い、ボーダフォンが用意した簡易的な通信設備に収容。その後、携帯電話用の4Gおよび2Gの電波に変換して送波するという方式だ。こうして通信の途絶した町を順次圏内に引き戻している。


ウクライナの通信支えるスターリンク

スターリンクはすでに、ウクライナのインターネット環境を下支えしている。侵攻開始間もない2月26日、ウクライナのフョードロフ副首相兼デジタル変革相がイーロン・マスク氏に支援を要請すると、マスク氏はわずか10時間半後にウクライナでのスターリンク経由の衛星通信を稼働させた。その後も数度にわたり大量の送受信用アンテナを無償提供している。

アメリカの海外援助組織である国際開発庁は、スペースXとの官民連携を通じ、これまでにスターリンク端末5000台をウクライナに寄贈した。

衛星インターネットは、低い軌道に浮かぶ衛星を中継地点とし、既存の通信網と遠隔地のユーザーとを電波でつなぐ。今回は各集落で受信した衛星からの電波を、さらに携帯の電波に変換することで周囲に届け、携帯電話の基地局からの電波が停波した地域を再び圏内に復旧させた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

株式・債券ファンド、いずれも約120億ドル流入=B

ワールド

中国、総合的な不動産対策発表 地方政府が住宅購入

ビジネス

アングル:米ダウ一時4万ドル台、3万ドルから3年半

ワールド

北朝鮮、東岸沖へ短距離ミサイルを複数発発射=韓国軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中