最新記事

生物兵器

アメリカはロシアを攻撃するための「鳥兵器」を作っている?

Russian Conspiracy Theory Says U.S. Training Birds to Spread Bio Weapons

2022年3月14日(月)18時05分
ダニエル・ビラリアル

ロシアの陰謀論によるとアメリカは、ウクライナの生物兵器を運ぶ鳥の訓練している LagunaticPhoto-iStock.

<ウクライナで生物化学兵器を製造していると噂のアメリカに関する最新情報。ウクライナ侵攻を正当化するためのフェイクニュースの一つだが、最近は中国もそれに調子を合わせるようになっている>

アメリカがウクライナで生物兵器を製造していると盛んに非難しているロシア国防省が、さらに突飛な説を持ち出した。アメリカは致死率の高い病気をロシア国民の間に蔓延させるために、ウクライナで鳥を訓練しているというのだ。

この説もまた、ロシアが現在進行中のウクライナ侵攻を正当化するために提示した多くの虚偽の主張の一つに過ぎない。そのなかには、ウクライナ当局がロシア民族の大量虐殺を行ったという根拠のない主張も含まれている。

ロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は3月10日、ロシア政府が管理するテレビメディア「RIAノーボスチ」でこの陰謀について述べた。

ロシアの民営ニュースメディア「プラウダ」が報じたところでは、米軍には、「死亡率50%」の鳥インフルエンザ(H5N1)の拡散型およびニューカッスル病のウイルスを鳥に感染させるという計画がある、とコナシェンコフは語った。

ニューカッスル病は呼吸器系、神経系、消化器系を侵す鳥類の伝染性疾患で致死率が高い。

RIAノーボスチの放送ではアメリカを象徴する紋章が入った地図、書類、鳥の写真などが紹介された。コナシェンコフによると、ロシア軍当局はウクライナ東部のケルソン保護区から飛んできたウイルスに感染した鳥を何羽か捕獲したという。

何年も前から完全論破

スミソニアン国立アメリカ歴史博物館によれば、第2次大戦中、アメリカは「ピジョン計画」と名づけた爆弾誘導用のハトの訓練を一時的に試みた。だが、戦場で使われることはなく、この計画は1953年に中止されたという。

ロシア政府は以前から、米国防総省がウクライナで鳥、コウモリ、爬虫類を含む生物兵器を作るために「コウモリ由来のコロナウイルス」の研究と実験に資金を提供してきたという説を根拠もなく主張していた。そのあとに登場したコナシェンコフの説で、ウクライナに米軍の細菌戦争研究所があるという数年前からロシアが唱えている陰謀説が復活した。

米国務省のある報道官は、ロシアの主張を「真っ赤なウソ」「まったくのナンセンス」とし、「こうした主張は長年に渡って、何度も完全に論破されてきた」と付け加えた。

米国防総省のジョン・カービー報道官は、この疑惑を「不条理」で「くだらない」「プロパガンダ」と表現した。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官もこの主張を「ばかげている」と言った。

CIAのウィリアム・バーンズ長官は、10日の上院情報委員会で、ロシアはこの説を自らが化学または生物兵器による攻撃を行うための伏線として、非難の矛先を米軍とウクライナ軍に向けた可能性があると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中