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ウクライナ行きに備えるシリアの「傭兵」:ただ混乱をもたらす欧米諸国の人道介入

2022年3月9日(水)17時15分
青山弘之(東京外国語大学教授)

ロシアもシリア人「傭兵」を募集

ロシア側の報道に対抗するかのように、シリアの反体制派に近い立場をとるメディアも「傭兵」について報じた。

反体制系サイトの一つサウト・アースィマは3月1日、ロシアがシリア政府支配地域でウクライナでのロシア軍の軍事作戦を支援するための「傭兵」の募集を始めたと伝えた。


また、パン・アラブ系日刊紙の『シャルク・アウサト』(アッシャルクル・アウサト)も3月5日、シリア人2万3000人あまりが、ウクライナでロシア軍とともに戦闘に参加する準備ができているとする記事を掲載した。

記事は、イドリブ県出身の著名なシリア人記者のイブラーヒーム・ハミーディーによるもの。
記事によると、複数のシリア人仲介業者が、シリア駐留ロシア軍司令部が設置されているラタキア県フマイミーム航空基地の名のもとに、首都ダマスカスや政府支配地域で、ウクライナでロシア軍とともに戦闘に参加することを取り決めた契約を若者と交わし、その数は2万3000人に達しているという。

彼らは、アサド大統領のいとこで、2020年に粛清されたビジネスマンのラーミー・マフルーフ氏が運営していたブスターン慈善協会傘下の民兵の元メンバーや国防隊メンバーなど。

ウクライナでの戦闘に参加する若者には、7カ月間で7,000米ドルが支給される予定。
任務はウクライナでの「施設防衛」だが、7カ月間シリアに戻らないこと、シリア政府が本件に関与しないこと、が契約の条件だという。

ロシア側が雇った「傭兵」に関しては、ドンバス地方での戦闘に投入されているといった情報も流れている。その真偽は定かではないが、ウクライナでの戦闘が、こうした「傭兵」の流入によって泥沼化し、シリアと同じように混乱が再生産される仕組みができれば、それによってもっとも得をするのは、言うまでもなくロシアの動きを封じることができる欧米諸国である。

欧米諸国の人道介入は、仮に自由や尊厳をもたらすことができなくとも(自由や尊厳をもたらすことはほとんどないが)、確実に混乱を作り出し、政敵を陥れることができる。その意味では、極めて巧妙な戦略だと言える。

ヤフー個人より転載

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