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中国経済

中国Z世代の働き方

2022年1月7日(金)18時22分
片山ゆき(ニッセイ基礎研究所)

一方、就職時に重視する内容を世代別にみた場合はどうであろうか。以下では、X世代(主に1960~1970年代に生まれた人。図表5では65後、75後が該当)、Y世代(ミレニアム世代とも呼ばれ、1980~1990年代に生まれた人。図表5では85後が該当)とZ世代(図表5では95後、00後が該当)に分けて見てみる。

図表5によると、Z世代が就職時に重視すると最も多く回答しているのは、収入の高さや福利厚生の充実(図表5-1)であり、およそ6割が重視すると答えている。この項目については、X、Y、Z世代と世代が若くなるにつれて重要度が高くなっている。一方、企業理念への賛同や業務目標の実現については、X、Y、Z世代と世代が若くなるにつれて重要度は低くなっている(図表5-5)。X世代、Y世代はZ世代と比較して、就業期間が長く、また、高度経済成長を支えたという経験などもあろうが、世代別で重要度が最も高いX世代の75後は38.9%、重要度が最も低いZ世代の00後は18.6%とその差は20ポイント以上ある。更に、仕事が忙しくなく、趣味や副業の充実を重視する傾向(図表5-6)は特にZ世代が高く、例えばX世代の00後はY世代の85後よりもおよそ9ポイント高くなっている。

一方、仕事の内容への興味や自身の力の発揮について注目してみると、Z世代(95後:45.0%、00後: 49.4%)は、Y世代(85後:47.0%)、X世代(65後:51.7%、75後:52.2%)とそれほど大きな差はない点がうかがえる(図表5-2)。

会社における研修の機会や技能の習得、レベル向上といった面においては、X世代の65後(25.9%)などはすでに一定度の職位や技能レベルに達していることも考えられ、それほど高くはない(図表5-3)。Z世代において95後は47.0%、00後は39.3%が重視すると回答しており、特に20代を中心とした95後はY世代(47.3%)と同様に意欲的ともいえよう。

昨年は若年層を中心としたライフ・スタイルの1つ「躺平」(タンピン)が話題となった。タンピンの本来の意味は、寝そべるや横たわるである。そこから派生して、競争社会から自主的に離脱し、結婚や出産などのライフイベントを回避し、家や車といった高額消費のみならず普段の生活などの消費も抑える低消費、低意欲の生き方を指している。確かに、経済的に恵まれた時期に育ったZ世代は、それより前のX、Y世代と比較して、仕事よりは自身のプライベートな時間や生活をより大切にし、快適に過ごそうとする様子は見えてくる。高度経済成長期を支えたX世代、Y世代が持つ企業理念への賛同や業務目標の達成といった成長への貢献はそれほど感じられない。しかし、そうだからと言って、タンピンに代表されるような無気力というわけでもなく、自身の力が発揮できる仕事を重視し、仕事を通じて技能を高め、レベル向上を目指すという点はそれ以前の世代とそれほど変わらない点もうかがえる。

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