最新記事

米政治

日本人が知らないトランプの現在の力

TRUMP'S NEGATIVE EFFECT

2022年1月18日(火)15時50分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

ただトランプによる推薦は候補者にとって必要なものとは限らず、複雑な心境で受け止めている者もいる。

昨年11月のバージニア州知事選では、共和党候補の新人グレン・ヤンキンが記録的な額の資金6790万ドルを調達し、民主党候補のテリー・マコーリフ元知事に勝利した。

トランプは昨年5月にヤンキン支持を表明。ヤンキンは表向きには歓迎したが、選挙戦にトランプを担ぎ出すことは望まないと側近らは明言した。

理由は明らかだ。マコーリフ本人をはじめ、応援に回ったジョー・バイデン大統領もカマラ・ハリス副大統領も、トランプを選挙戦の焦点にしようと必死だった。

だが人当たりのいいヤンキンは、元実業家で共和党員という2点を除けばトランプと共通項がなく、トランプと同一視しようとする攻撃をかわすには「自分自身になるだけでよかった」と、選挙参謀を務めたジェフ・ローは言う。

トランプのむき出しの好戦的姿勢は最も忠実な支持者に愛され、トランプという政治的ブランドに必須の要素だと共和党側も理解している。だが万人受けはせず、前回大統領選で多くの有権者が対立候補に票を投じる動機になった。

バイデンの支持率が下がるなか、トランプがインフレ率や犯罪率の急上昇、終息しないコロナ危機、不法移民問題など、大半の有権者にとっての関心事を重視することを、共和党内の圧倒的多数は願っている。

そうなれば中間選挙で圧勝し、トランプの大統領選再出馬のいい足場固めになるとみているからだ。

だが前回大統領選で不正があったとの妄執が続くなら、中間選挙へのトランプの介入は最終的に、党に打撃を与えることになりかねない。

でも、ほかに誰がいる?

トランプに近い筋によれば、再出馬の判断は中間選挙の結果次第だ。

「共和党が再び上下両院で多数派になったら踏み切る」と、ある情報提供者は本誌に語った。

だが、それはいい案なのか。共和党は答えを見つけようとしている。

現時点では大半の世論調査で、2024年大統領選でトランプとバイデンが再対決した場合、トランプへの支持が僅差で上回るとの結果が出ている。

しかし、まだ3年近く先のことだ。それまでに多くのことが変化し得る。

共和党は今のところ、大統領としての実績と再選後のビジョンに基づく選挙戦を展開すれば、トランプはバイデンだけでなく、どの民主党候補にも勝てると判断している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中