最新記事

変異株

ステルス・オミクロン「BA.2」、科学者が感染増を警戒

2022年1月31日(月)14時48分

新型コロナウイルスの急激な感染拡大は一部の国で既にピークアウトしたものの、なお収束には程遠い。そして、現在の世界における感染のほぼ全ては、強力な感染力を持つオミクロン株が占めている。英オールダムで2020年8月撮影(2022年 ロイター/Phil Noble)

新型コロナウイルスの急激な感染拡大は一部の国で既にピークアウトしたものの、なお収束には程遠い。そして、現在の世界における感染のほぼ全ては、強力な感染力を持つオミクロン株が占めている。ただ、科学者が今警戒しつつあるのは、このオミクロン株「BA.1」の派生株の1つである「BA.2」が、欧州やアジアの一部で「BA.1」から置き換わる形で勢いを増している事態だ。「BA.2」についてこれまでに分かっていることを以下にまとめた。

「ステルスオミクロン」

世界的な科学イニシアティブであるインフルエンザウイルス遺伝子データベース(GISAID)に今月25日時点で登録されたゲノム解析データに基づくと、世界の新型コロナウイルス感染の98.8%は「BA.1」だ。だが、世界保健機関(WHO)によると、「BA.2」の感染報告も最近増加している。

WHOは「BA.1」と「BA.2」のほか、さらに2種類のオミクロン派生株「BA.1.1.529」、「BA.3」もリストアップ。いずれも遺伝子的には近似しているが、それぞれ微妙に変異した特徴によって働きが違ってくる可能性もある。

フレッド・ハッチンソンがん研究センターで計算科学を用いたウイルス研究をしているトレバー・ベッドフォード氏は28日、GISAIDの情報とオックスフォード大学が運営するデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」を踏まえると、「BA.2」はデンマークにおける感染の約82%、英国の9%、米国の8%を占めている、とツイッターに投稿した。

「BA.1」はそれ以前の変異株に比べて検知が幾分簡単だった。「BA.1」は一般的なPCR検査で利用される3つの「標的遺伝子」の1つが欠失しているからで、この特徴を持つウイルスが検出された場合、自動的に「BA.1」だと推定されてきた。

一方で、時に「ステルスオミクロン」と呼ばれる「BA.2」は、「BA.1」のような標的遺伝子の欠失が見当たらない。そのため科学者らは、デルタ株を含めた以前の変異株と同じやり方、つまりGISAIDなどの公的なデータベースに登録されたゲノムの数を追いかけることで動向を注視している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中