最新記事

地政学

中国か台湾か ソロモン諸島、国交問題で政府と州が対立

2021年12月5日(日)11時48分

中台の対立による影響は

中国と台湾はここ数十年、南太平洋を巡るライバル関係にある。この地域の島しょ国の中には、一方から他方へと関係を乗り換える動きもあり、中台双方が影響力を高めるために援助やインフラの提供を競い合っているという指摘も表面化している。

台湾と公式の外交関係を維持している国は15カ国。台湾と断交し、中国に乗り換えた最も最近の2例が、2019年9月のソロモン諸島とキリバスだ。

だがマライタ州のダニエル・スイダニ州首相は、州内から中国企業を追放し、米国からの開発援助を受け入れた。

スイダニ州首相は5月に治療を受けるために台北を訪問し、ソロモン諸島の中央政府および駐ホニアラ中国大使館から抗議を受ける事態となった。

担当医師らは、スイダニ州首相には脳腫瘍の疑いがあり、外国の病院での治療を推奨していたと話している。州首相の帰国は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連で数回にわたり延期されたが、10月にはマライタに戻っている。

中国・台湾の言い分は

台湾は、暴動にはまったく関与していないと述べている。一方、中国外務省はソロモン諸島での事態を憂慮していると述べ、両国の関係を損なおうとする試みは「無益だ」としている。

中国外務省の広報官は「我が国とソロモン諸島の外交関係の樹立が、ソロモン諸島の根本的かつ長期的な発展に沿ったものであることは、諸事実が証明している」と語った。

他の太平洋島しょ国は

南太平洋地域の主要な地域グループである太平洋諸島フォーラムのヘンリー・プナ事務総長は、「すべての当事者」に自制を促し、法の支配と憲法を遵守することを求める声明を発した。

米国の言い分は

米国務省はホニアラにおける暴力行為に懸念を表明し、平和と安全の迅速な回復を支持すると表明した。その上で、ソロモン諸島との間に「しっかりとした絆」を維持しているとも述べている。

米国際開発庁(USAID)は2020年、持続可能な林業プロジェクトと平和維持部隊の再建を手始めとして、マライタ州を拠点とする開発プログラムに2500万ドル(約28億5400万円)を供与した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国投資家、転換社債の購入拡大 割安感や転換権に注

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中