最新記事

ハリウッド

A・ボールドウィンに「弾は入っていない」と銃を渡した助監督は、以前から悪名高い人物

Asst. Director Who Gave Alec Baldwin 'Cold' Gun Has History of Unsafe Work Conditions: Prop Maker

2021年10月25日(月)18時48分
ファトマ・ハレド
アレックス・ボールドウィン

2017年のエミー賞授賞式でのアレックス・ボールドウィン Mike Blake-REUTERS

<安全管理を軽視する助監督を野放しにしてきたせいで、ボールドウィンは人を死なせてしまうことになったのか>

米ニューメキシコ州サンタフェの映画撮影現場で21日、小道具の銃で誤射が起きて2人が死傷した。事故の前、助監督のデーブ・ホールズは俳優のアレック・ボールドウィンに問題の銃を渡し、弾丸は入っていないと説明していたという。

この事故について、本誌は映画やテレビドラマの撮影で使われる火薬の専門家で小道具製作も手がけるマギー・ゴールに話を聞いた。

今回の誤射は助監督のホールズが「安全な労働環境の維持を怠った」ためというのがゴールの見方だ。かつて同じ撮影現場で働いた際も、ホールズは現場の安全に十分に配慮していなかったという。

ゴールによれば、ホールズが関係した映画の撮影セットは「閉鎖空間」になる傾向があった。「消防車のための通り道や駐車スペースも用意されず、出口はふさがれて......安全のための打ち合わせもなかった」

またゴールは、「映画業界では、銃の安全に関する適切な知識や経験の欠如が常態になっている」と述べた。

誤射が起きたのは西部劇映画『ラスト(原題)』の撮影現場。ホールズはボールドウィンに、弾丸はこめられていないと言って小道具の銃を渡したという。

警察によれば、ボールドウィンはこの銃の引き金を引き、撮影監督のハリナ・ハチンズが死亡、ジョエル・ソーザ監督が負傷した。

セットに実弾を持ち込むこと自体が問題

ゴールは今後、ホールズと仕事をしたことのある人々の多くの証言を集めた正式な報告書の作成を求めていくという。

「セットにおいて銃の安全性がおざなりにされていい理由は絶対にない。たとえそれが、発砲できない小道具の銃でもだ」とゴールは述べた。

NBCニュースによれば、セット内での武器の安全性に関して関係者が正式に告訴されたかどうか、映画の制作会社は把握していないとしているという。

本誌は制作会社にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

撮影現場で実弾を扱うことは「完全な犯罪事件」と捉えるべきだとゴールは考えている。銃は本物であれ小道具であれ、セットへの持ち込みは一定のルールの下で行うべきだという。

例えば、現場に経験豊かな小道具担当者や免許を持ち経験も積んだ武器担当者を配置するとか、けっして銃を人に向けない、といったことだ。また、リハーサルなら発砲できないレプリカを使うこともできたはずだとゴールは言う。

「どんな場合であれ、セットの近くに実弾を持ち込むべきではない」とゴールは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ

ワールド

バイデン・トランプ氏、6月27日にTV討論会で対決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中