最新記事

イノベーション

世界一白い塗料がギネス認定 98%の太陽光を反射、冷却効果は「エアコンより強力」

2021年10月20日(水)17時10分
青葉やまと

「この塗料により、エアコンの必要性は完全になくなるかもしれない」Purdue University/Jared Pike

<白さのギネス記録を更新。赤外線を多く放出し、塗装面を冷却する>

アメリカの研究により、史上最も白い塗料が開発された。太陽光を98.1%反射する特性をもち、「最も白い塗料」としてギネス世界記録に認定された。9月16日発売の2022年版『ギネス世界記録』に掲載されている。

塗料は米中西部・インディアナ州のパデュー大学で機械工学を研究する、シューリン・ルアン教授らのチームが開発した。大学院生たちとの共同研究で実現に結びつけた。

単に白さが美しいだけでなく、太陽熱の大部分を反射することから環境対策として実用性が期待される。同大によるリリースのなかでルアン教授は、「我々が7年ほど前にこのプロジェクトに着手した際、省エネルギーと気候変動への対応を意識していました」と振り返る。

これまでの最も白い塗料の世界記録は、昨年10月に同チームが実現した反射率95.5%であった。吸収率の比較では4.5%から1.9%に低減し、2倍以上の性能に改善した。

白さが生む、エアコン並みの冷却力

今回開発された塗料は非常に白いため、塗装した面を冷やす効果をもつ。色が温度に影響を与えることは、夏場に違った色のシャツを着て出歩くことを考えるとわかりやすい。黒いシャツは熱を吸収しやすく、暑さがこもりやすい。反対に白いシャツは太陽光を反射するため、比較的涼しく過ごすことができる。

従来の市販塗料であれば、熱の遮断効果を謳うものでも80〜90%の反射率に留まり、周囲より温度を低く保つ効果は発揮しづらかった。今回開発された塗料は98.1%の太陽光を遮断し、さらに塗装面から赤外線を放出する。実験によると塗装面の温度は、夜間の屋外で周囲よりも約10.6℃、昼間の屋外で約4.4℃低くなる。

本塗料を1000平方フィート(およそ93平米、あるいは9.7メートル四方)の屋根に塗布した場合、約10キロワット相当の冷却効果が得られる。研究チームは、「これは多くの家庭で使われているセントラル空調方式のエアコンよりも強力です」と説明している。セントラル空調とは、大型の室外機を屋外1箇所に設置し、ダクトを通じて各部屋に冷気を送出する方式を指す。実質的に1家庭分の冷却能力をまかなえるとの説明だ。

USAトゥデイ紙もチームの見解を引用し、「非常に白いために、ゆくゆくはエアコンの必要性を低減あるいは排除することさえできる可能性のある塗料」だと伝えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国、外資銀の国内為替取引を後押し 外国人投資家の

ビジネス

午前のドルは153円後半で軟調、ポジション調整の売

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米CPI後の株高好感 円高で

ビジネス

金融分野のAI利用、規制が必要となる可能性=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中