zzzzz

最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナ根絶は理論的に可能...集団免疫なくとも NZ研究

2021年8月17日(火)18時15分
青葉やまと

この状態をより多くの国と地域で実現するためには、入国者のコントロールなどの施策に加え、やはりワクチンの普及による集団免疫の獲得が鍵となる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で公衆衛生を研究するロバート・キム=ファーレイ医学教授は、米医学情報誌の『メディカル・ニュース・トゥデイ』に対し、「真の根絶に向けた唯一にして最大の障害は、コミュニティ内での新型コロナ感染を終息させるという意味において、完全な集団免疫を達成するために極めて高いワクチン接種率を達成・維持する必要がある点でしょう」と述べている。

集団免疫なくとも

一方、今回の研究を主導したウィルソン博士は、たとえ集団免疫の達成が難しくとも新型コロナの撲滅は可能だと考えている。博士は天然痘の根絶プログラムを例示し、感染者を中心とした一定距離内に住む住民に絞ってワクチン接種を行う「リング・ワクチネーション」の方式でウイルスの制圧に成功したと指摘する。国レベルでの集団免疫なくして撲滅に成功した実例だ。供給量が限られる途上国などを中心に、新型コロナにおいても有効な手法となる可能性はある。

ただし、ここにきて感染力の強いデルタ株が出現し、集団免疫の獲得は幻想だとの捉え方も出ている。英ガーディアン紙によると、オックスフォード・ワクチン・グループのトップはデルタ株により、集団免疫の達成が「絶対に有り得ない」状態になったとコメントした。ワクチンの接種を完全に終えた場合、感染者との接触後に陽性と判定される率は未接種者よりも低下するが、それでも一定の割合で突破感染が発生してしまうためだ。

今後も変異株とのいたちごっこになるとの見方があるが、ウィルソン博士としては、将来的にワクチンで制圧可能だと考えている。ウイルスの変異能力はいずれかの時点で限界に達し、その時点で開発された新規のワクチンによって終止符を打てるはずだという。根絶には長年を要する可能性もあるが、粘り強く公衆衛生のしくみを改善してゆくことが他の疫病対策も含めたメリットにつながる、と博士は訴えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「精密」特攻...戦車の「弱点」を正確に撃破

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 5

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 6

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 7

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 8

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中